診断のポイント
【1】潜伏期は約8日(3~21日)であるが,外傷歴がなく感染経路が不明な場合も多い。
【2】国内感染者の年齢層はDTP3種混合ワクチンを接種していない40~50歳台以上に多い。
【3】主訴の約80%が開口障害である。
【4】破傷風の臨床経過・症状の特徴を日頃から理解しておくことが早期診断を行ううえで重要である。
緊急対応の判断基準
【1】破傷風第3期では軽微な刺激で全身強直が発現し,呼吸・循環に異常をきたすため,安全な搬送が難しくなる。このため,破傷風を疑った時点で早期に救急・集中治療が可能な施設へ移送する。
【2】移送の際は光・音刺激をなるべく回避するように努める。
症候の診かた
破傷風の病期は以下の4期に分けられる。
【1】第1期:潜伏期。初期症状の開口障害が出現するまでの期間。首筋の突っ張り,飲み込みにくいなどの前駆症状が出現する。しかし,これらの症状が出現する頻度は低く,この段階での診断は困難である。
【2】第2期:開口障害期。開口障害から全身けいれん(後弓反張)出現までの期間。破傷風様顔貌(痙笑),発語障害,嚥下障害,項部硬直がみられる。
【3】第3期:けいれん持続期。意識は清明で,軽度の音や光刺激でけいれんが誘発される。けいれんの持続により呼吸障害が生じる。重症例では血圧・脈拍の急激な変動も認め,このような症状を自律神経過剰反応という。
【4】第4期:回復期。けいれんが徐々に軽減する。
検査所見とその読みかた
【1】細菌検査:創部の細菌培養による破傷風菌の同定には時間を要し,同定率は50%以下である。また,破傷風菌は土壌の常在菌であるため,非破傷風患者においても陽性となる。このため,培養検査の結果だけでは確定診断とはならない。しかし,菌株から破傷風毒素(テタノスパスミン)が検出されれば確定診断に有益である。
【2】血液検査:破傷風血清抗体価検査≧0.1IU/mLの場合は破傷風
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