診療支援
診断

ガス壊疽
Gas Gangrene
田熊 清継
(川崎市立川崎病院・救命救急センター所長)

診断のポイント

【1】外傷歴:土壌や糞便,汚水に汚染された外傷や,「搔き壊し」「ひび割れ」などの小外傷。

【2】局所所見

初期では皮膚所見は乏しいが,強い疼痛やしびれを呈し,進行性に水疱形成と周囲の暗紫色が出現。

❷浮腫,湿潤,握雪感(筋層内や皮下でのガスの産生により,病変部を圧迫すると雪を握りしめるような弾力がない感触)。

【3】重篤な全身症状:高熱,虚脱,意識障害など。

【4】画像診断:単純X線写真,CT,MRIで,筋層内を中心としたガス像所見

【5】血液生化学検査:白血球やCRPの著しい増加。

【6】微生物学的検査:Clostridium属の細菌や嫌気性菌などのガス産生菌の同定

緊急対応の判断基準

【1】高熱を伴う局所の強い疼痛やしびれがあれば疑い,すみやかに広域抗菌薬の投与を開始する。

【2】Clostridium属の細菌感染では,高圧酸素療法が奏功することが多いが,優先すべきは迅速な広域抗菌薬の投与と壊死組織の除去である。

【3】四肢に発生した進行性の重症軟部組織感染では,広域抗菌薬投与下,創部の開放・壊死組織除去を施行する。治療抵抗性の場合は患肢の切断を要する。

症候の診かた

 敗血症の原因となる重症軟部組織感染症としては,ガス壊疽と壊死性筋膜炎(necrotizing fascitis:NF)が挙げられる(表1)。ガス壊疽は,筋層内に感染によるガス産生があるものをいい,NFは皮下組織から筋膜に感染による炎症や壊死がある場合をいうが,ガスの有無や量で区別することが難しい場合が多い(表2)。

【1】ガス壊疽

❶クロストリジウム性ガス壊疽

土壌や糞便中のClostridium属の細菌が外傷などにより体内に侵入し感染する。健常者に多い。

筋層内でガスを産生し発症後1日で四肢末端から躯幹に急激に進行することがある。

高圧酸素療法は有効である。

❷非クロストリジウム性ガス壊疽

腸内細菌や嫌気性菌

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