診療支援
診断

頸椎・頸髄損傷
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Cervical Spine and Spinal Cord Injury
大饗 和憲
(埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター・講師)

 交通事故や高所からの転落などによる高エネルギー外傷で頸部に無理な外力が加わった場合に起こる。ただし近年,脊柱管の狭窄を有する高齢者の増加に伴い,転倒などの軽微な外傷で起こる非骨傷性頸髄損傷(中心性頸髄損傷)が増えている。

診断のポイント

【1】頸部の疼痛,圧痛を認める。

【2】四肢の運動障害や感覚障害を生じている。

【3】損傷の程度により完全損傷と不完全損傷に分けられる。

❶完全損傷:運動機能,感覚知覚機能がすべて失われた状態。

❷不完全損傷:一部の機能が残存した状態。

【4】重度の頸髄損傷ではしばしば副交感神経優位となるため来院時徐脈,低血圧を認める。

【5】麻痺の重篤な頸髄損傷では肋間筋の運動麻痺により腹式呼吸を呈する。

症候の診かた

【1】障害の有無の確認

❶各神経支配領域の運動障害,感覚障害をチェックする。

❷完全麻痺のように見えても仙髄機能が残存している場合があり(sacral sparing),会陰部の感覚や肛門括約筋の随意収縮を必ず確認する必要がある。

【2】障害の程度の評価

❶重症度:ASIA分類(American Spinal Injury Association Impairment scale)で評価する。

❷神経学的所見

世界の標準評価指標であるASIAのチャート(Standard Neurological Classification of Spinal Cord Injury)で評価する(図1)。

受傷直後の神経学的所見は治療上きわめて重要であるため,必ず記録に残す必要がある。

運動は上下肢それぞれ5つのkey muscleにおける徒手筋力テスト(manual muscle test:MMT)を0~5で計測し,また感覚は28対の部分の触覚と痛覚を0~2で評価する(表1)。

症状:経時的に変化するため,神経学的所見は経過中に何度も評価する必要がある。

検査所見とその読みかた

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