診断のポイント
【1】「気胸+ショック」で,緊張性気胸と診断できる。
【2】気胸は,体型,既往歴,現病歴と,患側の胸郭運動の消失,呼吸音の減弱,打診上の過共鳴音,皮下気腫,頸静脈の怒張,気管の偏位などの身体所見から疑う〔「気胸」項(→)を参照〕。
【3】気胸は画像検査で確定できるが,緊張性気胸の際には,これらの画像診断を行う余裕がないことが多い。
【4】人工換気を受けている患者において突然の低血圧+呼吸音減弱などがあれば,緊張性気胸を疑う。
緊急対応の判断基準
気胸でショックを伴い,緊張性気胸を疑えば,画像診断による確定を待たずに,直ちに胸腔穿刺を行う。
症候の診かた
【1】呼吸苦や胸痛を訴える患者で,気胸のリスク要因があり,呼吸音の減弱や打診で過共鳴音,皮下気腫があれば,気胸を疑う。
【2】頸静脈怒張,気管偏位は胸腔内圧の増強を示唆する。
【3】ショック,血圧低下をきたす前に,頻脈,末梢冷感,冷汗などの身体所見からプレショックを疑うことが必要である。
検査所見とその読みかた
【1】胸部超音波検査やX線で気胸の多くは診断できる。緊張性気胸を生じる場合には,気胸も大きく,縦隔の偏位をきたすことも多く,診断は容易である。
【2】緊張性気胸では画像撮影の余裕はなく,画像による確定診断前に,胸腔穿刺を行う。
確定診断の決め手
画像検査を行わずに穿刺を行った場合,穿刺による循環動態の改善と,穿刺後の画像検査による気胸の診断が,緊張性気胸の確定診断となる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
胸痛では,肺炎,胸膜炎,心膜炎(→),肺塞栓,筋骨格の損傷,大動脈解離(→)や急性冠症候群などと鑑別する。リスク因子,身体所見などから鑑別可能である。
確定診断がつかないとき試みること
身体所見だけで確診できない場合には,胸部超音波検査またはX線を撮影する。
合併症・続発症の診断
【1】ドレナージ後の胸部X線で,肺拡張不全,再膨張性