診療支援
診断

腹腔内出血
Intra-abdominal Hemorrhage
井上 義博
(岩手医科大学教授・救急・災害・総合医学講座・救急医学分野)

診断のポイント

【1】腹腔内出血は腹部外傷による,腹腔内臓器損傷や血管損傷で発生する。

【2】内因性疾患では大動脈破裂や内臓動脈破裂,肝臓癌破裂などで発生する。

【3】診断には超音波検査が有用で,特に外傷ではfocused assessment with sonography for trauma(FAST)によって腹腔内の液体貯留を検索することが必須の検査となっている。

緊急対応の判断基準

【1】腹腔内出血の量と貯留速度によりショックに陥った場合:細胞外液の大量輸液が必要である。

【2】大量輸液でも安定しない場合:輸血と止血治療〔緊急手術や画像下治療(IVR)〕が必要になる。

【3】大量輸液によってショックから離脱できた場合:待機手術やIVRあるいは保存的治療を選択する。

症候の診かた

【1】腹腔内に出血すると,多くの場合,急激な腹痛と腹膜刺激症状を呈する。

【2】血液が貯留した部位に圧痛を認め,腸管蠕動は減弱する。

【3】腹腔内出血によって生じる腹痛と腹膜刺激症状は,消化管穿孔によるものより軽度で,時間とともに軽減することが多い。

【4】出血量によって顔面蒼白となり,ショックを呈する。

検査所見とその読みかた

【1】直接的な検査所見:画像診断による。

❶腹部超音波検査(図1):簡便で腹水の描出に優れている。特に外傷初期診療では,FASTとして,ショックや,ショックをきたす可能性の高い高エネルギー外傷に必須の検査として位置づけられている。

❷腹部CT(図2):腹水の描出に優れているが,多くの場合,検査室まで患者を移動させなければならないため,ショックの患者の救命処置室からの不用意な移動は控えなければならない。

【2】間接的な検査所見:出血性ショックの徴候と,血液検査による貧血所見が体腔内出血を疑わせる所見となる。出血の初期は,出血量と血液検査の貧血の程度が乖離するので過小評価しないよう,注意が必要であ

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