診療支援
診断

シートベルト損傷
Seat Belt Injury
森 周介
(東京医科歯科大学大学院救急災害医学分野)

診断のポイント

【1】シートベルト装着者については,事故の程度によらずシートベルト損傷を疑う。

【2】2点式と3点式では臓器損傷形態が異なる。

【3】シートベルトサインとは片側の肩口から腰部にかけてと腹部を横断する皮下出血の一方もしくは双方のことをいう。体表変化以上に筋骨格,内臓損傷の存在を疑い慎重に診察する。

緊急対応の判断基準

【1】外傷初期診療ガイドライン(JATEC)のABCDEに則り診察を進める。

【2】下記のいずれかに該当する場合は筋骨格,内臓損傷を強く疑う。自施設で対応困難な場合には静脈路確保のうえ直ちに高次医療機関に転送する。なお,妊婦の場合には産婦人科医に診察を仰ぐ。

❶シートベルトサイン陽性。

❷高エネルギー外傷。

❸バイタルサインが不安定。

症候の診かた

 シートベルトサインは診断の一助となるが,事故の程度,シートベルト装着の有無,2点式・3点式のどちらかなど,詳細を聴取することで潜在的なシートベルト損傷を疑うことが可能となる。2点式は腹腔内損傷,横隔膜破裂,腰椎Chance骨折の頻度が高い。

検査所見とその読みかた

【1】胸部・骨盤単純X線:胸郭変形,血気胸,縦隔拡大,骨盤骨折。

【2】Focused assessment with sonography for trauma(FAST):血胸,心タンポナーデ,腹腔内出血。

【3】CT:筋骨格,大血管,消化管,臓器(心・肺・肝・胆・膵・脾・腎・尿路系・骨盤内臓)損傷。ただし輸液に反応しない出血性ショックの場合にはCTの前に緊急処置・手術を優先する。

確定診断の決め手

【1】画像診断による。対象臓器は多岐にわたる(表1)。

【2】大量血胸,重症骨盤骨折,心タンポナーデ,腹腔内出血,臓器損傷,消化管穿孔,血管損傷を認めた場合:緊急手術,血管内治療などを考慮する。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】一見軽症でも臓器損傷が潜んでいることがあ

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