診療支援
診断

急性高山病
Acute Mountain Sickness (AMS)
松嶋 麻子
(名古屋市立大学教授・先進急性期医療学)

診断のポイント

【1】2,500m以上の高所環境。

【2】高所における頭痛,めまい,吐き気の症状。

【3】急性高山病(AMS)の既往。

緊急対応の判断基準

【1】AMSの重症型として以下の2つがある。

❶高地脳浮腫(high altitude cerebral edema:HACE):高所環境においてAMSの症状の有無にかかわらず,精神状態の変化,運動失調を呈する。

❷高地肺水腫(high altitude pulmonary edema:HAPE):高所環境においてAMSの症状の有無にかかわらず,安静時の呼吸困難,チアノーゼ,ラ音を聴取する。

【2】HACE,HAPEは生命にかかわる場合があり,酸素投与(SpO290%以上を目標)を行いながら直ちに低地へ搬送する。

症候の診かた

【1】登山などにより高所環境へ移動した際に発症する。

【2】頭痛はほぼ必発であり胃腸症状,疲労・脱力,めまい・ふらつきなどの症状を伴う。

【3】高度2,500m以上で発症することが多いが,2,000m以下で発症する場合もある。

【4】個人差が大きく,AMSの既往,飲酒,急な登高などが発症のリスクといわれている。

検査所見とその読みかた

【1】高所環境では通常の検査を行うことはできないため,症状と発症までの経緯(1日の登高),AMSの既往などで診断する。SpO2モニターがある場合は低酸素血症(SpO2<90%)が目安になる。

【2】低地へ移動したあとは,軽度のAMSの症状や所見は検査を行う前にすみやかに改善する。

❶HACE:頭部CTで脳浮腫による脳溝の狭小化,脳室圧排所見を認め,頭部MRIでは白質の浮腫を認める。

❷HAPE:肺高血圧を伴う非心原性肺水腫であるため,胸部単純X線写真,胸部CTで両側に散在する浸潤影,斑状影,すりガラス影とともに肺動脈主幹部の拡張を認める。

確定診断の決め手

 高所環境において発症する症状からレイクルイーズ

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