診断のポイント
【1】暑熱環境への曝露が重要になる。
【2】ただし,労作性熱中症が40%で,非労作性熱中症が60%であることも知っておく。
【3】特に非労作性熱中症の場合には,感染症や基礎疾患に伴う高体温を除外する必要がある。
【4】深部体温の上昇が医学的に問題であるので,深部体温を正確に測定する。
【5】症状がなくても,採血結果で腎機能障害,肝機能障害,凝固障害を認めればⅢ度となる。
緊急対応の判断基準
【1】意識障害を認める場合:直ちに高度医療機関に搬送する。
【2】採血結果で腎機能障害,肝機能障害,凝固障害を認めた場合:Ⅲ度熱中症の診断になり,入院適応となる。
【3】熱中症の診断基準に体温自体は厳密には含まれていないが,すみやかに38℃台に冷却することが推奨されている。
症候の診かた
【1】症状としては,めまい,失神(立ちくらみ),筋肉痛・筋攣縮,四肢のしびれ,気分不快などが比較的早期の症状として知られ重症度としてはⅠ度の範疇である。その後,頭痛,吐き気,倦怠感,虚脱感,軽度の意識障害を呈するようになり,これらはⅡ度の重症度になる。この対応が遅れると,高度の意識障害,けいれんなど,Ⅲ度の重症度に移行する。
【2】脱水に伴う脳血流低下が最初の徴候である。そのためめまい,失神,頭痛,吐き気,嘔吐,虚脱感などの初期症状には注意を要する。
【3】脳温が上昇すると血管拡張,発汗停止を認める。普段と様子が異なる発言などを認めるようになれば要注意である。
【4】スポーツにおいては,代謝の亢進に伴い,過換気症状を呈する場合がある。発汗が激しく,明らかに疲弊している状況で過換気症状を認めた場合には注意する。
検査所見とその読みかた
【1】肝機能障害,腎機能障害,凝固障害を認めた場合には,Ⅲ度熱中症の診断に該当して入院適応となる。入院できない医療機関の場合には入院可能な医療機関への転院が必要になる。
【2】大量発汗に伴う