診断のポイント
【1】咬創。
【2】出血毒による腫脹。
【3】横紋筋融解やコンパートメント症候群の併発。
【4】循環血液量減少性ショックから多臓器不全への危険性。
緊急対応の判断基準
【1】日本にはマムシ,ハブ,ヤマカガシの3種類の毒蛇が生息している。主成分は出血毒で神経毒も含有されている。ただし,ヤマカガシは血液凝固作用が強く,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を引き起こす。
【2】軽症にみえても数時間は経過観察し,腫脹が進行する場合には入院させる。
【3】腫脹の進展度から重症度を判定する(表1図)。受傷6時間以内に重症度Ⅲ以上の場合は抗毒素血清の投与を考慮する。
症候の診かた
【1】主たる病態:血管透過性亢進,出血傾向による疼痛,腫脹,皮下出血である。高度な腫脹が進行するとコンパートメント症候群や循環血液量減少性ショックをきたす可能性もある。
【2】神経毒による眼症状(視力障害,複視など)がみられることもある。
【3】革手袋や作業靴の上から咬まれた場合は20%が無毒創となる。
検査所見とその読みかた
【1】血清クレアチンキナーゼ値が上昇する。
【2】循環血液量減少性ショックから急性腎障害を併発するとBUNやクレアチニンも上昇する。
【3】毒が直接血液に入った場合は溶血をきたし血小板が減少する。
確定診断の決め手
咬み痕からだけで診断は困難である。特定は目撃証言や蛇の持参による。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
毒蛇以外の咬傷:目撃されていない場合,蜂やムカデなどの刺・咬傷もありうる。
確定診断がつかないとき試みること
刺入部や腫脹部位を注意深く観察する:出血毒のため,漏血が持続し,腫脹部位やその中枢部に皮下出血が認められる。
経過観察のための処置
【1】細胞外液補充液を投与し,循環動態の安定化をはかる。
【2】抗菌薬投与や破傷風の予防も
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