診療支援
診断

下垂体腺腫
Pituitary Adenoma
松野 彰
(帝京大学主任教授・脳神経外科)

診断のポイント

【1】下垂体前葉ホルモン分泌亢進に伴う身体所見の有無をみる。

【2】下垂体前葉ホルモン基礎値と標的器官ホルモン値を測定する。

【3】視力視野検査を行う。

【4】画像検査としてはMRIが有用である。

緊急対応の判断基準

 下垂体腺腫の患者が急激な頭痛を生じた際には,下垂体卒中を起こした可能性がある。急激な視力低下や急性副腎不全を起こすこともある。緊急で下垂体MRIと副腎皮質ホルモンの補充が必要であり,下垂体腺腫の摘出術を緊急で行うこともある。

症候の診かた

【1】下垂体前葉ホルモン分泌亢進に伴う身体所見:以下の所見を見逃さないことが重要である。

❶巨人症/先端巨大症〔成長ホルモン(GH)産生腺腫〕

四肢末端骨の肥大(靴や指輪が入らなくなった)・下顎や眉部の突出・舌の肥大・睡眠時無呼吸・咬合不全・手根管症候群・高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性頭痛を呈する。

Heel pad thicknessの測定や手指足趾のX線撮影も行う。

大腸癌や甲状腺腫瘍の合併にも注意が必要である。

❷Cushing病〔副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生腺腫〕:満月様顔貌,中心性肥満,皮膚菲薄化,骨粗鬆症,高血圧,耐糖能異常,抑うつなど。

❸甲状腺機能亢進症〔甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生腺腫〕:発汗過多・頻脈の有無や甲状腺腫大の有無の確認が必要である。

❹高プロラクチン血症(PRL産生腺腫):女性では月経不順・乳汁分泌,男性では性欲低下が起こる。

❺臨床的非機能腺腫(大半がゴナドトロピン産生腺腫):下垂体機能低下症を生じる。

【2】視力低下・視野狭窄:腫瘍によるmass effectとしての症状である視力低下・視野狭窄も重要な症候である。典型例では,両耳側半盲から始まり,視野狭窄の悪化,視力低下,放置すれば失明へと症状が進行していく。眼底検査で視神経萎縮の有無も観察する。

検査所見とその読みかた

【1】下垂体前葉

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