診断のポイント
【1】明確な遺伝歴があり,下位運動ニューロン徴候を中心とした神経症候,および女性化乳房,陰萎などのアンドロゲン不全症状を呈していれば,比較的容易に診断可能である。
【2】血液検査では,CK高値,Cr低値などが特徴的であるが,アンドロゲン受容体遺伝子第1エクソン内にあるCAGリピートの延長を確認することで確定診断できる(表1図)。
症候の診かた
【1】緩徐進行性の球麻痺および四肢筋力低下・筋萎縮
❶筋力低下は30~60歳程度に発症することが多く,発症年齢はCAGリピート数が大きいほど若年となる傾向がある。
❷四肢筋力低下・筋萎縮に先行して,手指振戦や有痛性筋けいれんを認めることが多い。
❸筋肉を収縮させたときに線維束性収縮が増強するcontraction fasciculationが診断の参考になる。
【2】喉頭けいれん:発作的に短時間の吸気困難を生じる喉頭けいれんも,本疾患に特徴的なエピソードとして聴取する価値がある。
【3】アンドロゲン不全症状:女性化乳房(図1図)の有無を確認することが診断の一助になるが,アンドロゲン不全症状としては,ほかに体毛の減少,皮膚の女性化,精巣(睾丸)萎縮などが認められる。妊孕性は保たれていることが多い。
検査所見とその読みかた
【1】遺伝子検査:確定診断のためには,遺伝子診断によりアンドロゲン受容体遺伝子内のCAGリピート数を調べることが有用である。正常例ではCAGリピート数は9~36であるが,本疾患患者では38以上に延長している。
【2】血液検査:血清CK高値と血清Cr低値が特徴的である。その他,血液検査上,肝機能異常,耐糖能異常,脂質異常症がしばしば合併する。
【3】心電図:Brugada型心電図を呈することがある。
確定診断の決め手
アンドロゲン受容体遺伝子におけるCAGリピートの異常延長を証明することが最も確実で重要である。
誤診しやすい疾患との鑑
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