診療支援
診断

橋中心性髄鞘崩壊(浸透圧性脱髄症候群)
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Central Pontine Myelinolysis
足立 弘明
(産業医科大学教授・脳神経内科)

診断のポイント

【1】低ナトリウム血症,血漿浸透圧の急激な上昇。

【2】頭部MRIで橋底部中央の病変。

【3】意識障害,けいれん。

【4】四肢の弛緩性麻痺,筋力低下,構音障害。

【5】重症例では,嚥下障害,呼吸障害,昏睡状態。

緊急対応の判断基準

【1】血清ナトリウム濃度が120mEq/L以下の著明な低ナトリウム血症で,けいれんや意識障害などの中枢神経障害を伴う場合には,すみやかな補正が必要となる。

【2】血清ナトリウムの補正速度は1時間あたり0.5mEq/L,24時間で10mEq/L程度の増加に抑え,血清ナトリウム濃度を数日かけて125mEq/L以上に増加させる。

症候の診かた

【1】典型例では,次のように症状が現れる。

❶まず意識障害やけいれんが起こり,次第に意識が改善する。

❷数日後に構音障害や嚥下障害などの皮質延髄路症状が出現し,四肢麻痺を生じる。

❸病変が橋被蓋に広がると瞳孔異常,眼球運動障害,意識障害をきたす。

検査所見とその読みかた

【1】血液検査:電解質に異常が認められた場合や,低ナトリウムあるいは高ナトリウムが確認できれば,本症のような浸透圧性脱髄症候群を疑う。

【2】画像検査

❶発症後数日~数週間は,頭部MRIを行っても異常が確認できないこともある。拡散強調画像(DWI)では,浸透圧障害による細胞浮腫を反映して,発症24時間以内に拡散低下がみられる。そのため早期発見にはDWIが有用とされている。

❷MRIのFLAIR画像やT2強調画像で,橋の中央部に三叉矛状や楕円形の異常な高信号を認める。橋以外では,基底核,視床,内包,外包,前障などに通常左右対称に異常な高信号を認める(図1)。

確定診断の決め手

【1】低ナトリウム血症などの急速な補正や飲水量の増減などにより,体液の浸透圧が急激に上昇して生じる,炎症反応に乏しい脱髄疾患とされている。

❶橋底部中央に病変が認められるものを橋中心髄鞘崩壊症という

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