診療支援
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■消化管疾患の最近の動向
松本 主之
(岩手医科大学教授・消化器内科消化管分野)


 消化管は長い管腔臓器であり,部位により腸管壁や管腔内の環境が大きく異なっている。また,消化・吸収のみならず自然免疫や獲得免疫に関与する重要な臓器でもある。さらに,中枢神経とも密接な相関を有している。このように,消化管疾患を診断するためには,生化学,生理学,解剖学,病理学,細菌学などの幅広い知識が必要である。一方,消化管疾患は腫瘍性疾患,炎症性疾患,機能性疾患に大別されるが,それぞれの領域の病態に遺伝的要因,メタゲノム,あるいは全身性疾患が密接に関与することが明らかとなっている。したがって,正しい診断のためには,遺伝子や腸内細菌叢からみた最新の知識を得ることも重要である。そこで,本章では各執筆者の先生方にEBMを重視しつつ最新の情報も要領よく盛り込み,鑑別疾患や診断手順について記載していただくようお願いした。

 消化管疾患領域の最近の動向として,Barrett食道,ヘリコバクター胃炎,潰瘍性大腸炎に代表される慢性炎症を背景とした発癌が問題となっている。特に,Helicobacter pylori除菌後胃癌の診断は大きな課題であり,高危険を抽出し経過観察することは重要といえる。一方,過去には注目されていなかったが,非十二指腸乳頭の上皮性腫瘍が増加しつつあり,病理学的分類も見直されている。また消化管は常に薬剤に曝露される臓器であり,生物学的製剤を含む新規薬剤による消化管病変の特徴を知ることもきわめて重要である。さらに,本邦で上昇の一途を示す炎症性腸疾患では,新たな疾患概念が報告され,相次いで新規治療薬が承認されている。すなわち,単に診断するのみでなく,病態を正しく把握して治療法を選択する必要がある。さらに,本邦で有病率が増加しつつあるのは大腸憩室性疾患であり,特に憩室炎と憩室出血についてはガイドラインが作成されたところである。本章では,これらの疾患について診断のコツや鑑別疾患のポ

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