診療支援
診断

食道癌
Esophageal Cancer
磯本 一
(鳥取大学教授・機能病態内科学)

診断のポイント

【1】内視鏡による表在癌(粘膜癌,粘膜下層癌)の拾い上げが重要である。

【2】拾い上げには通常内視鏡による注意深い観察に加え,ヨード染色や画像強調観察(narrow band imaging,blue laser imaging)が用いられる。

【3】食道癌の深達度は転移や予後と密接に関連しており,病期に応じて治療方針を決定する。

【4】表在癌の深達度診断には,拡大内視鏡による血管形態の分類や超音波内視鏡が有用である。

【5】0期では内視鏡治療が適応となる。Ⅰ~Ⅲ期は外科手術が標準的であるが化学放射線療法も選択される。

症候の診かた

 食道癌の症候は進行度(病期,表1)によって異なる。

【1】早期癌(0期):ほとんど自覚症状がなく,粘膜下層癌でも無症状のことがあり,熱い食べ物がしみる感じや胸骨後部痛,飲み込む際の違和感程度のことも多い。

【2】進行癌:通過障害が現れる。さらに進行すると体重減少や貧血を伴うようになる。

【3】気道に浸潤した場合:血痰や気道狭窄が出現する。

検査所見とその読みかた

 組織型は扁平上皮癌が約90%で圧倒的に多く,腺癌4%程度と少ない。

【1】まず行うべき検査:食道癌の診断にはまずX線造影検査と内視鏡検査が行われる。

❶内視鏡検査は表在癌の拾い上げに適している。表在癌とは粘膜下層までの浸潤にとどまるものであり,固有筋層以深に及ぶものは進行癌とする。

❷粘膜内に限局しリンパ節転移を伴わない早期癌(0期)を検出するには,血管透見像の異常,色調変化,光沢の変化,粘膜表面の凹凸変化,わずかな隆起や陥凹に着目する(図1)。

❸内視鏡検査で癌が疑われた場合には,拡大内視鏡検査やヨード染色による色素内視鏡検査が用いられる。癌部は染まらずに黄白色の領域(ヨード不染帯,図2)として認識される。ただし,刺激性があることやヨードアレルギー患者には使用できない欠点もある。

❹Narr

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