診断のポイント
【1】10~20歳台という若年時に発症,男性優位。
【2】慢性的に繰り返す腹痛と下痢。
【3】食欲低下と体重減少。
【4】発熱・貧血・低栄養・炎症反応高値。
【5】肛門病変:特に複雑性痔瘻。
緊急対応の判断基準
【1】潰瘍病変から生じる腸管穿孔:原則緊急手術が必要となってくる。
❶診断は腹膜刺激症状に合致した特徴的理学所見と血液検査で早期に疑い,腹部CTを実施し穿孔部位を確定する。
❷診断後は迅速に炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)外科治療専門施設に搬送する。
【2】腸管狭窄に伴う腸閉塞
❶軽度な場合は一時的絶飲食で改善を認める場合もあるが,高度な場合は入院加療にて絶飲食・静脈栄養管理と腸管減圧に努める。
❷改善が認められない場合は病変腸管部位の切除術が実施され,内視鏡的拡張術も有効である。
【3】高度な病変腸管に隣接した腹腔内膿瘍の肛門周囲膿瘍の形成:抗菌薬投与で改善する場合もあるが,高度な場合は外科的ドレナージあるいは外科的切除術が必要となってくる。
【4】腸管病変部位からの突然の大量出血:緊急入院下で,絶飲食の腸管安静と内科治療強化で改善を認めるが,持続的出血例では血管塞栓術や腸管切除に至る場合がある。
症候の診かた
【1】腹痛:時に便通異常を伴わず断続的に生じる。
❶病変部位と程度によって痛みの度合い・部位が異なる。
❷小腸病変では痛み部位が変動し,時に胃・十二指腸痛と誤認される。
【2】下痢:小腸病変や広範な大腸病変を有する場合は水様性下痢を生じ,血性下痢の頻度は少ない。
【3】発熱:感染徴候がなく弛張熱の型を呈する。時には38℃以上の高熱を呈する場合もある。
【4】体重減少:下痢や食欲不振に伴って体重減少を生じる。小児発症例では成長障害が前面になり成長ホルモン分泌低下症などに誤認されることがある。
【5】肛門病変:さまざまな形態の肛門病変を合併する