診療支援
診断

肝硬変症
Liver Cirrhosis
寺井 崇二
(新潟大学大学院教授・消化器内科学分野)

診断のポイント

【1】腹水,黄疸。

【2】腹部エコーによる肝の形態変化。

【3】血小板数低下。

【4】アルコール多飲,肝炎ウイルス感染などの背景肝疾患がある。

緊急対応の判断基準

【1】肝硬変の加療中に出血性ショックがみられた場合:静脈瘤破裂か肝細胞癌破裂を念頭におき,腹部エコー,造影CTを行う。

【2】吐血を合併している場合:胃食道静脈瘤破裂が想定されるため,ショック状態を安定化したうえで,上部消化管内視鏡検査を行う。

【3】静脈瘤破裂では内視鏡的静脈瘤結紮術やバルーン下逆行性静脈的塞栓術を,肝細胞癌破裂では経カテーテル的肝動脈塞栓術を要する場合があるため,自施設での治療が困難な場合,高次医療機関への搬送を考慮する。

症候の診かた

【1】浮腫:低アルブミン血症による血漿浸透圧低下および門脈圧亢進を主因とする。下腿を中心とした圧痕性浮腫(pitting edema)である。

【2】胸腹水

❶肝硬変では腹水の割合が多いが,まれに胸水もみられる。浮腫と同様に低アルブミン血症および門脈圧亢進を主因とする漏出性である。

❷腹部膨満感による食事摂取量低下により,さらに低アルブミン血症が進行するという悪循環に陥ることがある。

【3】くも状血管腫,手掌紅斑:くも状血管腫は直径3~10mmほどのクモの足状の発疹を指し,手掌紅斑は手のひらの膨らんでいるところだけが赤色になり,そこに赤紫の小さな斑点が混じる皮疹をいう。

【4】腹壁静脈拡張

❶メデューサの頭(caput medusae)とよばれ,臍を中心として皮下静脈が放射状に蛇行しながら広がる形態を特徴とする。門脈圧亢進に伴う側副血行路の一部である。

❷下大静脈閉塞でも皮下静脈の拡張がみられるが,こちらは上行性であり,形態が異なる。

【5】黄疸

❶胆汁のビリルビン排泄障害による。

❷初期には眼球結膜の黄染が目立つが,高度になると全身の皮膚の黄染がみられ,腎障害や瘙痒症の原因となる。

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?