診療支援
診断

肝悪性腫瘍
Liver Malignant Tumor
建石 良介
(東京大学大学院講師・消化器内科)

診断のポイント

【1】診断の契機は,腹部超音波検査が最も多い。

【2】腹部超音波検査のみである程度の鑑別は可能であるが,必ずダイナミックCTあるいはダイナミックMRIを撮影する。

【3】典型的な肝細胞癌は,ダイナミックCTあるいはダイナミックMRIの造影早期相で濃染し,後期相で造影剤の洗い出し(wash-out)が認められる。

【4】Gd-EOB-DTPAを用いた造影MRIは,肝細胞癌の早期発見に有用である。

【5】肝内胆管癌と転移性肝癌(腺癌)を画像所見だけで鑑別することは困難である。

症候の診かた

【1】肝細胞癌

❶多くの場合肝細胞癌は無症状であるが,進行例では腫大した肝臓が自覚される場合がある。

❷肝表の腫瘍から出血を起こす場合があり,軽度の違和感から激痛まで生じうる。出血例では,出血した血液による腹膜刺激症状が出血部位と離れた部位に認められることがあり,注意が必要である。

❸肝細胞癌患者では,肝硬変を合併することが多く,肝硬変に伴う腹水や脳症,食道静脈瘤の症状がきっかけで肝細胞癌と診断される場合が少なくない。

❹頻度は低いが,肝外転移(特に骨)の症状が初発症状である場合がある。

【2】肝内胆管癌

❶腫瘍の発生部位によるが,進行すると肝門部の胆管閉塞から閉塞性黄疸が出現する場合がある。

❷頻度は低いが,肝外転移(特に骨)の症状が初発症状である場合がある。

【3】転移性肝癌

❶多くの場合消化管などの原発巣の症状が先行するが,時に肝腫大が初発症状である場合がある。

❷腫瘍破裂はまれである。

検査所見とその読みかた

【1】腹部超音波検査

❶侵襲のない検査であり,検診や肝機能障害を認めた場合の1次検査として広く行われている。条件がよければ1cm以下の腫瘍も検出可能である。

❷高度の肥満,慢性肝疾患による肝実質の不均一化,肝萎縮,手術創,肝切除後の肝の変形など種々の理由によって,腫瘍の描出が困難であることも多い。

❸肝細

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