診断のポイント
【1】先天性胆道拡張症
❶総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張する先天性の形成異常で,膵・胆管合流異常を合併するものをいう。
❷ただし,肝内胆管の拡張を伴う例もある。
【2】膵・胆管合流異常
❶解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常である。
❷共通管は長く,十二指腸乳頭部括約筋(Oddi括約筋)が合流部に及ばないため,膵液と胆汁の相互逆流により胆道もしくは膵にさまざまな難治性の病態(胆石症,胆管炎,膵炎,膵石など)を引き起こすとともに,胆道発癌のハイリスクな病態である。
【3】欧米人に比較して東洋人に多く,半数は10歳以下の小児期に発症し,男女比は1:3で若年女性に多い。若年者(50~65歳)に胆道癌を高率に合併し,先天性胆道拡張症例では拡張胆管と胆囊に,非拡張例では胆囊に好発する。
【4】先天性胆道拡張症の戸谷分類
❶総胆管の限局性拡張を呈するⅠ型と,Ⅰ型に肝内胆管の拡張が加わったⅣ-A型の頻度が非常に高く,Ⅰa型,Ⅰc型およびⅣ-A型は,ほぼ全例に膵・胆管合流異常を合併する。
❷ただし,頻度の低い他のⅠb型,Ⅱ型,Ⅲ型,Ⅳ-B型,Ⅴ型では膵・胆管合流異常の合併はほとんどみられない。
【5】先天性胆道拡張症の診断
❶胆管拡張と膵・胆管合流異常の両者が画像または解剖学的に証明された場合になされる。
❷ただし,結石,癌などによる胆道閉塞に起因する後天性,2次的な胆道拡張は除外する。
症候の診かた
【1】主な症状は,腹痛が最も多く,嘔吐,黄疸,発熱などである。
【2】先天性胆道拡張症の症状は腹痛,黄疸,腹部腫瘤が3主徴といわれてきたが,すべてそろうことは少ない。
【3】小児では,繰り返す腹痛発作,腹痛時の高アミラーゼ血・尿症,胆道穿孔による胆汁性腹膜炎があれば本疾患を疑う。
【4】膵液の胆管内逆流による急性胆管炎,胆汁の膵管内逆流や共通管内の蛋白栓による急性膵炎を併発することが