診療支援
診断

慢性膵炎
Chronic Pancreatitis
正宗 淳
(東北大学大学院教授・消化器病態学分野)

診断のポイント

【1】中高年の男性,大酒家。

【2】繰り返す急性膵炎様の腹痛発作。

【3】血中または尿中膵酵素値の異常。

【4】進行例は消化吸収障害や糖尿病。

【5】膵臓の石灰化,膵石。

緊急対応の判断基準

【1】急性増悪は急性膵炎()に準じた重症度判定を行い,重症例は高次医療機関への転院を検討。

【2】後述するhemosuccus pancreaticusでは,動脈瘤塞栓術などの血管内治療(interventional radiology:IVR)を行う。

症候の診かた

【1】進行性,非可逆性。臨床経過を膵機能が保たれる代償期と膵機能が低下した非代償期,その間の移行期に分ける。病期の適切な把握が大切。

【2】40~50歳台に飲酒と関連した腹痛発作で発症することが多い。

【3】代償期には腹痛や背部痛,時に急性増悪(急性膵炎)を繰り返す。

【4】腹痛は心窩部から左季肋部を中心に,飲酒や脂肪食摂取後に起こりやすい。進行するにつれ,腹痛は軽減することが多い。

【5】非代償期では,高脂肪食摂取後の脂肪便,下痢などの消化吸収障害(膵外分泌機能不全)や膵性糖尿病(膵内分泌機能不全)が主たる症候。

【6】消化吸収障害が進行すると体重減少や低栄養を認める。

検査所見とその読みかた

【1】血液生化学検査

❶急性増悪時:血中膵酵素が一過性に上昇。発症後期になると膵機能は20~30%以下に低下し,血中膵酵素は低値を示す。急性増悪時でもその上昇は基準値内にとどまることがある。

❷強い腹痛発作を認めない間欠期においても,血中膵酵素の高値が持続する場合には,膵石の主膵管内嵌頓に伴う尾側膵管の拡張や仮性囊胞など,膵液のうっ滞を示唆。

❸消化吸収障害による低栄養状態を反映して,血中総コレステロール値やアルブミンの低値,貧血を認めることがある。

【2】画像検査:膵線維化,膵実質の脱落に伴い生じる主膵管・分枝膵管の不整な拡張や膵萎縮,ならびに膵石灰

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?