診断のポイント
【1】60歳以上。
【2】上腹部痛,腰背部痛。
【3】閉塞性黄疸。
【4】腫瘍マーカー(CA19-9,CEA)の上昇。
【5】新規糖尿病,糖尿病経過中の急激なコントロール不良。
症候の診かた
【1】体重減少:進行した膵癌ではしばしば食思不振が続き,体重減少を認める。
【2】上腹部痛:膵頭部から膵体部にかけての癌では上腹部痛を呈する場合がある。しばしば胃痛と誤診され,上部消化管内視鏡検査のみで異常となしとされてしまうことがあるため注意が必要である。
【3】腰背部痛
❶膵癌は背側の神経叢に浸潤しやすく背部痛をきたしやすい。
❷膵癌の膵管閉塞による膵管内圧上昇もその原因となりうる。
【4】黄疸
❶膵頭部付近の癌では胆管浸潤を認め,閉塞性黄疸を呈する。
❷三管合流部より遠位の胆管閉塞では無痛性の胆囊の腫大も伴い,Courvoisier徴候が認められる。
検査所見とその読みかた
【1】血液生化学検査
❶アミラーゼ,リパーゼ,エラスターゼ1などの膵酵素が上昇する場合もあるが特異性は低い。
❷CA19-9やCEAも進行癌で高値を認めるが,スクリーニング検査としての有用性は高くない。
【2】腹部超音波検査:辺縁不整な低エコーの膵内腫瘤(図1a図)や間接所見としての膵管・胆管拡張がみられる(図1b図)。
【3】CT
❶膵癌は血流に乏しい腫瘍であるため,ヨード造影剤を用いたダイナミックCTは重要であり,辺縁不整な乏血性腫瘤として描出される(図2図)。
❷間接所見としての膵管・胆管拡張の所見も大切である。
❸外科切除の決定には周囲の脈管との関係や肝転移などの遠隔転移をチェックする。
【4】MRI検査
❶一般的に(脂肪抑制)T1強調画像で低信号(図3a図),T2強調画像で高信号(図3b図)を呈する。
❷拡散強調画像では高信号(図3c図)を呈する。
❸造影剤(Gd-DTPA)を用いた造影MRIでは正常膵に対して低信号を呈する。また肝特異