膵囊胞性疾患は,仮性囊胞,真性囊胞,腫瘍性囊胞に分類される。腫瘍性囊胞の主な種類と特徴は表1図を参照されたい。
診断のポイント
【1】腹部超音波,CT,MR胆管膵管撮影(MRCP)で存在診断を行う。
【2】必要な症例には,超音波内視鏡(EUS),内視鏡的逆行性胆管膵管撮影(ERCP),MRIなどで精査する。
【3】良性・悪性の鑑別が必要な症例には,FDG-PET,MRI-DWIなどを実施する。
症候の診かた
【1】膵腫瘍性囊胞に特異的な症候,所見はない。
【2】囊胞が巨大な場合は腫瘤を触知することがあり,消化管などの通過障害をきたすことがある。
【3】IPMNでは,経過中に急性膵炎を併発することがある。
検査所見とその読みかた
【1】膵腫瘍性囊胞に特異的な検査所見はない。
【2】悪性例ではCEA,CA19-9など腫瘍マーカーの上昇がみられることがある。
【3】膵頭部の病変では,閉塞性黄疸,胆道系酵素の上昇をきたすことがある。
【4】圧迫,浸潤などで腫瘍の尾側膵の萎縮がみられる症例では,耐糖能の異常,糖尿病の増悪がみられることがある。
【5】腹部超音波,CT,MRCPでは,膵臓内に存在する囊胞性病変(造影効果のない低吸収域として描出される),膵管の拡張などの所見を認める。
【6】EUS,ERCPでは,多房性か単房性か,膵管との交通,囊胞壁の造影効果,囊胞内隆起性病変の有無などを精査する。
確定診断の決め手
【1】確定診断には病理学的診断が必要である。
【2】膵管と交通のあるIPMNでは,ERCPによる膵液細胞診などで確定診断が得られることがある。
【3】膵囊胞性腫瘍に対する穿刺細胞診,組織診は播種のリスクがあり,症例を選んで実施することが推奨される。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】膵仮性囊胞
❶先行する急性膵炎,慢性膵炎の急性増悪,膵外傷の既往。
❷囊胞が短期間に増大,縮小する。
【2】膵真性囊胞
❶単純囊胞,類