診療支援
診断

急性心不全
Acute Heart Failure
百村 伸一
(自治医科大学附属さいたま医療センター・センター長)

診断のポイント

 急性心不全では患者が一刻を争う状況であることが多いので,診断と治療を並行して進めていく必要がある。

【1】まず心不全症状があること(後述)。

【2】類似症状を呈する疾患の除外。

❶腎不全,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)などの慢性呼吸器疾患,貧血,神経筋肉疾患など。

❷ただし類似の症状を呈する疾患が併存症として合併することも多い。

【3】BNPまたはNT pro-BNP上昇(迅速で測定できる場合)。

【4】原因疾患の検索。

❶既存の基礎心疾患の既往の有無。

❷特定の原因疾患の有無。

【5】増悪因子の同定。

緊急対応の判断基準

【1】循環動態が安定しているかどうか。

【2】心原性ショックに陥っていないか。

❶収縮期血圧(SBP)<90mmHgあるいは平均血圧(MBP)<65mmHg,参考値として乳酸値>2mmol/L。

❷該当する場合は強心薬,昇圧薬,補助循環を考慮。

【3】酸素化は十分であるか。

❶まず鼻カニューレで酸素吸入。

❷PaO2 80mmHg(SpO2 95%)未満,またはPaCO2 50mmHg以上の場合であれば直ちに陽圧呼吸,挿管などの呼吸サポートを考慮する。

症候の診かた

【1】うっ血の指標:

❶起坐呼吸,頸静脈圧の上昇,浮腫,腹水,肝頸静脈逆流。

❷聴診上のラ音,第Ⅲ音。

【2】低灌流の指標:小さい脈圧,四肢冷感,傾眠傾向,低ナトリウム血症,腎機能悪化。

検査所見とその読みかた

【1】一般検査

❶胸部X線写真(正面像):胸水の有無,肺水腫像(butterfly shadow),肺うっ血所見(Kerley's B line,peri-bronchial cuffing,hilar hazeなど),心拡大,原因心疾患に特異的な心陰影。

❷心電図:心筋梗塞,左室肥大,心房細動などの頻脈性不整脈,房室ブロックなどの徐脈性不整脈,

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