診断のポイント
【1】日本循環器学会心原性ショックレジストリの基準をもとに診断する(表1図)。
【2】原疾患は急性心筋梗塞,急性心筋炎,拡張型心筋症の急性増悪が多い。
【3】急性心筋梗塞に合併した場合,以下のいずれかを想定すべきである。
❶左主幹部や左前下行枝の近位部を責任病変とする左室ポンプ不全。
❷右冠動脈の右室枝分岐より近位部での閉塞による右室梗塞。
❸左室破裂・心室中隔穿孔・乳頭筋断裂による重症僧帽弁逆流などの機械的合併症。
緊急対応の判断基準
【1】心原性ショックと診断した場合:集中治療が可能な施設へ直ちに搬送する。
【2】急性心筋梗塞に伴う場合:緊急冠動脈インターベンションが可能な施設へ直ちに搬送する。
症候の診かた
【1】バイタルサイン:意識障害があり,頸動脈の拍動を触知しない場合は直ちに心肺蘇生術を開始する。多くの場合頻脈を伴うが,徐脈性の心原性ショックもありうる。収縮期血圧は大抵90mmHg以下である。
【2】病歴:本人から聴取不能であることがほとんどで,心疾患の既往があるかどうかを家族に聞く。
【3】身体所見:末梢冷感や冷汗は典型的な交感神経過緊張の症候である。機械的交互脈は左室収縮不全が重症であることを強く示唆する。
【4】呼吸音:左心不全が主体の場合,通常湿性ラ音を聴取する。右心不全が主体の病態では肺音はクリアである。
【5】心音:Ⅲ音を伴うギャロップがしばしば聴取される。収縮期雑音により初めて心室中隔穿孔が発見されることもある。
検査所見とその読みかた
確定診断に必須の検査は12誘導心電図と心エコーである。
【1】12誘導心電図
❶まず,虚血があるか否かを12誘導心電図で判断する。
❷左主幹部の重度の狭窄の場合,ST上昇がaVR誘導だけ認められ,その他の誘導でST低下が生じていることもある。
❸心筋炎やたこつぼ型心筋症では鏡像を伴わない広範囲のST上昇を認めることが多い。
❹重篤な不整脈(