診療支援
診断

狭心症
Angina Pectoris
木村 剛
(京都大学教授・循環器内科学)

診断のポイント

【1】安定狭心症

❶前胸部の痛み,圧迫感,絞扼感。しばしば頸部や顎,肩,腕に放散する。

❷持続は2分以上,10分以下。

❸労作や寒冷への曝露,ストレスにより誘発される。

【2】不安定狭心症(近年は急性心筋梗塞と合わせて急性冠症候群と呼称される)

❶安定狭心症に類似の胸痛,圧迫感,絞扼感。より強い症状。

❷持続は10~20分(心筋梗塞であればしばしば30分以上)。

❸安定狭心症に類似の因子により誘発されるが,より低いレベルの負荷で誘発される。

【3】冠攣縮性狭心症

❶夜間や早朝,安静時に安定狭心症に類似の胸痛,圧迫感,絞扼感が生じる。

❷運動耐容能が著明に日内変動する(早朝の運動能低下)。

❸過換気(呼吸),喫煙,アルコール,ストレスなどにより誘発される。

緊急対応の判断基準

 不安定狭心症(急性冠症候群)が疑われる場合は,早急に転送や治療などの対応が必要になる。

【1】胸部症状を有する患者:否定されるまでは急性冠症候群として扱い,早急に病歴・身体所見をとり,血液検査,12誘導心電図検査を施行する。わが国のガイドラインではこれらを10分以内に終えることを推奨している。

【2】初回の検査で診断に至らない場合:症状が持続している場合や冠動脈疾患のリスクが高い場合は,患者を帰宅させずに経時的変化を追うことも重要である。

【3】症状やバイタルサインが不安定な場合や12誘導心電図でST上昇を認める場合:血液検査の結果を待たずに検査治療や転送の手続きを進める。

【4】急性冠症候群が疑われた場合:わが国では緊急カテーテル検査,治療が施行可能な施設が多いため,可能であればカテーテル治療を施行可能な施設に転送する。

症候の診かた

【1】緊急の評価が必要な状態か:急性冠症候群は致命的な経過をたどりうるため,早急な評価と対応が必要となる。直ちに心筋逸脱酵素の測定と12誘導心電図検査を施行し,急性冠症候群かどうかの判断が必

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