診断のポイント
【1】突然生じた激しい胸痛が20分以上続く。
【2】締めつける,押さえつける,あるいは焼けるといった表現がされる激しい前胸部の痛み。
【3】糖尿病,高血圧,脂質代謝異常,喫煙などが発症のリスク。
【4】近年は30歳台などの若年発症も増えている。
緊急対応の判断基準
【1】上記[診断のポイント]のうち【1】【2】の症状がある場合:急性心筋梗塞の可能性があり,バイタルサインと身体所見をチェックし可能であれば12誘導心電図を記録し,すみやかに診断する。
【2】急性心筋梗塞と診断した場合:経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)再灌流療法を早急に準備。PCIが行えない病院であれば,血栓溶解療法の検討,また緊急再灌流療法が即座に実施可能な病院への紹介を考慮。その際には,選定先の循環器医師に直接患者の臨床像を報告する。
症候の診かた
【1】症状
❶前胸部痛が多い。また,顎,頸部,肩,心窩部,背部,腕への放散痛の症状も時に認める。
❷胸部症状を認めずに放散痛のみのこともある。
❸症状は少なくとも20分以上に及び,性状は痛みというよりも局在がはっきりしないことが多い。締めつけられる,圧迫される,焼けつくような感じという表現が多い。
【2】病歴:急性心筋梗塞の診断・治療にきわめて重要。再灌流療法に影響がないように迅速かつ詳細な聴取が必要である。
【3】高齢者の症状:心筋虚血による症状として息切れを訴えることや,全身倦怠感,意識レベルの低下などが症状のこともある。
検査所見とその読みかた
【1】心電図検査:胸痛を訴える患者が受診したら,早急に12誘導心電図を行う。
❶ST上昇型急性心筋梗塞
■前壁中隔梗塞では,前胸部誘導(特にV1-4),下壁梗塞では,肢誘導Ⅱ,Ⅲ,aVF,側壁梗塞ではI,aVLでのST上昇が多くの場合にみられるが,心臓のローテ