本項では術後患者を前提に論じる。
診断のポイント
【1】先天性心疾患(CHD)は全出生の1%に合併する最も頻度が高い先天性疾患であり,わが国の成人したCHD(ACHD)患者数は数十万人と推定される。
【2】診療の第1段階は小児期の病歴聴取(本人・家族および医療機関からの詳細な情報収集)である。病歴は長く,患者が自己の変化(悪化)を認識していない場合も多く,愁訴(心不全症状など)の聴取には留意する。
【3】小児期CHDの循環動態を理解したうえで,ACHDとしての異常(心室機能不全,弁機能不全,不整脈,高血圧症,肺高血圧症など)を評価する。特殊な病態に単心室循環(Fontan循環)がある(後述)。
【4】心エコー検査が評価の基本であり,CT(3次元構築)およびMRIも病態理解に大いに貢献する。
【5】必要に応じて,小児循環器専門医,心臓血管外科医との情報交換を躊躇せず,患者のドロップアウト阻止に注力する。
緊急対応の判断基準
【1】不整脈:多彩な原心疾患(CHD)が含まれるACHDの緊急対応に共通する病態として“不整脈”がある。その診断基準と処置は種々の不整脈治療に関連するガイドラインにより,バイスタンダーによる緊急処置が原則である。
【2】初期救命後,専門医に紹介搬送する。
症候の診かた
【1】小児期CHDの心血管構築異常は多彩かつ複雑である。しかし,小児期外科治療後のACHDでは,治療対象となる病態は,心室機能不全,弁機能不全,不整脈,高血圧症,肺高血圧症といった一般的なものである。CHD自体は心疾患である一方,術後ACHDは生活習慣病や高血圧と同等に位置づけられる“心疾患の原因となる基礎疾患”と考えることができる(図1図)。
【2】ACHDは単純型と複雑型に大別でき,後者は二心室(修復術後)循環とFontan循環に分けられる(表1図)。
【3】以下に症候の診かたを記すが,特殊性は少ない。
❶視診
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