診断のポイント
【1】心不全症状:呼吸困難,起坐呼吸,浮腫。
【2】胸部単純X線:心拡大,胸水,うっ血所見。
【3】バイオマーカー:脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)またはN末端プロBNP(NT-proBNP)上昇(BNP 40pg/mL以上・NT-proBNP 125pg/mL以上で軽度の心不全を,BNP 100pg/mL以上・NT-proBNP 400pg/mL以上で治療対象となる心不全を疑う)。
【4】心エコー検査:(びまん性)左室壁運動低下・左室腔拡大。
【5】冠動脈CTや冠動脈造影(coronary angiography:CAG)で冠動脈疾患の否定。
緊急対応の判断基準
【1】上記心不全症状や組織低灌流の所見(乏尿,チアノーゼ,四肢冷感,意識障害など)が急速に進行し,収縮期血圧<90mmHgと心原性ショックを呈する場合〔急性非代償性心不全(acute decompensated heart failure:ADHF)〕,患者の救命と血行動態の改善をはかるため,集中治療室を有する高度な循環器診療が可能な病院へ搬送する。この場合,急性冠症候群および急性心筋炎などの致死的疾患を否定する必要がある。
【2】血行動態が不安定な場合:採血結果を待たずに搬送を行う。
症候の診かた
【1】呼吸困難
❶初発の自覚症状として最多。労作時の息切れに始まり,重症化すると安静時にも呼吸苦を呈し,臥床すら困難になる(起坐呼吸)。
❷呼吸苦はしばしば咳嗽を伴い,感冒や気管支喘息として治療されることもある。
❸肺水腫をきたすと泡沫状ピンク色の喀痰を排出する場合があり,心不全が強く疑われる。
【2】浮腫:足背や下腿に認めることが多く,体重増加を伴う。浮腫をきたす腎疾患や肝疾患,甲状腺疾患と区別する。
【3】脈拍異常:心不全では脈拍は微弱で頻脈となる。しばしば上室性および心室性不整脈を合併する。
【4】頸静脈怒張:右心不全を併