診断のポイント
【1】閉経後の女性。
【2】先行するストレスを有することが多い。
【3】心室の壁運動異常は冠動脈支配では説明できない。
【4】心筋逸脱酵素上昇は軽度。
【5】壁運動異常にはさまざまなバリエーション。
症候の診かた
【1】胸痛:最も多くみられる症状だが,心筋梗塞よりも軽微であることが多い。高齢患者では無症状もある。
【2】呼吸困難:肺うっ血を伴う症例が20%ほどある。胸部圧迫感からくる症状を訴えている可能性もある。
【3】失神:形態的もしくは不整脈出現に伴って低心拍出状態に陥った場合に出現する。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査:急性心筋梗塞と同様の血液・生化学検査所見を有するも,壁運動に比してクレアチンキナーゼやトロポニンなどの心筋逸脱酵素の上昇は少ない。
【2】心電図
❶心尖部無収縮となる典型例急性期では,aVRでSTが低下し,V1でST上昇を認めないことが多く,両方を満たすと診断の感度,特異度はともに90%以上である。
❷巨大陰性T波は心筋梗塞後と同様に遷延する。
【3】心エコー検査
❶簡便に壁運動異常を描出することができる。
❷約80%が典型例,約20%が心尖部無収縮以外の壁運動異常を呈する。
❸左室内圧較差の描出,僧帽弁閉鎖不全の合併,無収縮部位の血栓形成などをみるためにも有用である。
【4】冠動脈造影,左心室造影
❶心筋梗塞との鑑別のために,可能な症例には冠動脈造影が推奨されるが,壁運動異常につながらない狭窄部位の有無は問われない。
❷冠動脈CTにて代用可能である。
❸左心室造影では図1図のような典型例と非典型例の鑑別に役立つ。
❹左室内圧較差の有無を直接測定可能である。
【5】心臓核医学
❶無収縮の部分に核種の取り込み低下がみられる。
❷タリウムやテクネチウムの取り込みが最も早く改善し,123I-MIBGの取り込み改善に最も時間がかかる。
❸13N-NH3 PETを用いた計測の結果,