診断のポイント
心筋炎に特異的な所見はないが,感冒様症状や消化器症状が先行する心症状(胸痛・失神・呼吸困難・動悸など)をみた際に心筋炎を疑うことが重要。
緊急対応の判断基準
【1】心筋炎が疑われたら,短期間で急激に病状が変化することを念頭におく必要がある。
【2】心電図モニター監視下での厳重な管理が求められるため,循環器専門施設への搬送が望ましい。
【3】低心拍出時や致死性不整脈など循環動態の維持が難しい場合には,すみやかに大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping:IABP)や経皮的心肺補助装置(percutaneous cardio-pulmonary support:PCPS)などの補助循環を導入する。
症候の診かた
【1】無症候のものから急性心不全や心原性ショック・心停止に至る劇症型まで多彩な病型を示すため,急性心筋炎の可能性を念頭において診断を進めることが大切である。
【2】急性心筋炎は多くの場合,感冒様症状(発熱,頭痛,筋肉痛)や消化器症状(嘔吐・下痢・腹痛)が先行し,その後数時間~数日の経過で心症状が出現する。
【3】下記に主な心症状を記す。
❶心不全徴候:肺うっ血徴候,頸静脈怒張,下腿浮腫や奔馬調律(Ⅲ音やⅣ音)などを約70%の症例で認める。
❷胸痛:約40%の症例で認め心膜刺激症状を反映する。
❸心膜摩擦音:心膜炎を合併した場合に聴取する。
❹手足の冷感や尿量減少:末梢循環不全を示唆する。
検査所見とその読みかた
【1】12誘導心電図
❶経過中に何らかの異常所見を認めることが多い。Ⅰ~Ⅲ度房室ブロック,QRS幅の拡大,異常Q波,R波減弱,低電位,心室頻拍,心室細動など多彩な心電図異常・不整脈を認める。
❷頻度としてはST-T異常が多く,冠動脈支配と一致しないST上昇が特徴的。
【2】胸部X線
❶心陰影の拡大,肺うっ血像,胸水の貯留を認める。
❷急激発症