診療支援
診断

心臓腫瘍
Cardiac Tumor
木原 康樹
(広島大学大学院教授・循環器内科学)

診断のポイント

【1】3主徴:心症状,全身症状,塞栓症状。

【2】経胸壁心エコー図でmass様エコーを確認する。

【3】血栓との鑑別が必要。しばしば臨床経過から判断される。

【4】CT,MRIでさらに精査する。

【5】組織診断のために,経食道心エコーガイドでの腫瘍生検が有用な場合がある。

緊急対応の判断基準

 呼吸困難などの心不全症状がある場合,腫瘍の可動性が高い場合はイベントリスクが高い。特に左房粘液腫は,脳梗塞などの塞栓症を生じやすく突然死の危険性もあるため,すみやかな専門の医療機関への移送が必要である。

症候の診かた

【1】無症状で経過し,画像検査で偶然に発見されることも多い。3主徴として,心症状,全身症状,塞栓症状がある。左房内腫瘍の場合はⅠ音亢進,拡張早期雑音(tumor plop sound)を聴取し,体位によって変化を認める。

【2】心症状:多くは呼吸困難,胸痛,失神など非特異的なものである。

❶粘液腫:左房に生じると僧帽弁狭窄症,右房に生じると三尖弁狭窄症類似の症状をきたしうる。

❷心筋内腫瘍:刺激伝導障害や心筋障害を認めることがある。また,心膜への進展・浸潤をきたすと収縮性心膜炎,心囊液貯留や心タンポナーデを呈する場合があり注意が必要である。

【3】全身症状:発熱,体重減少,全身倦怠感,労作時呼吸困難,めまい,失神など。体位によって心症状が変化する場合もある。

【4】塞栓症状:心臓腫瘍の断片,もしくは腫瘍表面に付着した血栓が飛来することによる。左房粘液腫の40~50%に全身性塞栓症を生じ,その半数は脳梗塞である。右心系腫瘍では肺塞栓を生じる場合もある。腫瘍の大きさ,形状(乳頭状・分葉状),可動性が塞栓リスクに関連する。

検査所見とその読みかた

【1】血液検査

❶粘液腫:貧血,白血球増多,赤沈亢進,高γグロブリン血症などがみられる。

❷奇形腫:αフェトプロテイン(AFP),癌胎児性抗原(CEA

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