診断のポイント
【1】頻脈性不整脈は100/分以上の脈拍数の速い不整脈であり,本項では期外収縮も含める。
【2】発生部位により,His束以上から出現する上室性頻脈性不整脈と脚以下から出現する心室性頻脈性不整脈に分類される。前者には,心房期外収縮,心房頻拍,心房粗動,心房細動,発作性上室性頻拍,後者には,心室期外収縮,心室頻拍,心室細動などが含まれる。
【3】診断には,頻脈発作の心電図記録が必要である。発作時の12誘導心電図が記録されれば診断の確率が高くなるが,Holter心電図やモニター心電図でもある程度は診断可能である。
【4】一般に,心室性不整脈は重症であり,心室細動と30秒以上持続する持続性心室頻拍は致死性不整脈に分類される。
【5】器質的心疾患の検索も重症度評価に重要である。
❶器質的心疾患としては,虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞),高血圧性心疾患,心筋症(拡張型・肥大型心筋症),心臓弁膜症などがあり,これらを有しないものは特発性とされる。
❷低心機能の器質的心疾患に伴う心室性不整脈は特に予後不良である。
緊急対応の判断基準
【1】症状・身体所見による判断基準
❶失神や眼前暗黒感などの症状を有する場合。
❷心不全症状を有する場合。
❸低血圧やショック症状を有する場合。
❹器質的心疾患があり,特に低心機能の場合。
【2】心電図による判断基準
❶Wide QRS頻拍。
❷Torsade de pointes(TdP)などの多形性心室頻拍。
❸心房細動・粗動などの上室性不整脈であっても,心拍数が速い場合。
症候の診かた
【1】失神(Adams-Stokes症候群)・眼前暗黒感:頻脈性不整脈に起因する脳虚血による最も重篤な症状である。心室頻拍などの心室性不整脈によることが多く,心室細動に移行すれば心臓突然死の原因となる。
【2】動悸
❶頻脈性不整脈の最も一般的な症状である。
❷しかし動悸といっても,頻脈による速拍感や
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