診断のポイント
【1】心電図におけるデルタ波の存在。
【2】頻拍発作(発作性上室頻拍や発作性心房細動)の心電図。
【3】発作時心電図がない場合は,頻拍発作を示唆する動悸や眼前暗黒感。
【4】失神の既往。
緊急対応の判断基準
頻拍発作によってAdams-Stokes発作をきたしている場合や血行動態が悪化している場合は直流通電(カルディオバージョン)を行う。
症候の診かた
頻拍中の血行動態悪化は,収縮期血圧≦80mmHg,肺水腫,狭心症発作の合併などで判断する。
検査所見とその読みかた
【1】非発作時12誘導心電図:デルタ波(A型,B型,C型)。
【2】発作時心電図
❶QRS幅の狭い規則的な頻拍-発作性上室頻拍。
❷デルタ波を伴ったQRS幅の広い不規則な頻拍-発作性心房細動(図1図)。
確定診断の決め手
【1】非発作時心電図にデルタ波を認めた場合:WPW症候群と確定診断される。
【2】【1】でかつ頻拍発作の心電図が記録されている場合:症候性WPW症候群と確定診断される。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
WPW症候群に伴う心房細動は下記の頻拍との鑑別が必要である。
【1】心室頻拍:wide QRS tachycardiaの鑑別診断として重要である。
【2】脚ブロックや心室内変行伝導を伴う心房細動:WPW症候群に伴う心房細動ではQRSの立ち上がりがスラー(デルタ波の強調)を呈する。
確定診断がつかないとき試みること
【1】詳細な診断には臨床電気生理検査(electrophysiology study:EPS)が必要である。副伝導路を介した順行伝導および逆行伝導の有無,副伝導路の不応期,頻拍の機序が同定できる。
【2】EPSが単独で行われることはまれで,EPSに引き続いて高周波カテーテルアブレーションが施行される。
予後判定の基準
【1】心房細動中の最短RR間隔が短い場合(≦260ミリ秒):心房細動が心室細動へ移行する危険が