診断のポイント
【1】心電図所見,臨床症状,家族歴,および遺伝子変異の有無などを参考にして診断する。
【2】先天性QT延長症候群(LQT)の多くは遺伝性(家族性)であり,安静時からQT間隔が延長していることが多い(図1図)。わが国での乳児1か月健診による前向きスクリーニングでは,4,285人中4例(0.09%,約1,100人に1人)が先天性LQTと診断されている。
【3】2013年の「HRS/EHRA/APHRS expert consensus statement」では,先天性LQTリスクスコア(表1図)が3.5点以上,先天性LQT関連遺伝子に明らかな病的変異を認める,あるいはQTc≧500ミリ秒のいずれかを認める場合,先天性LQTと診断する(表2図)。
【4】先天性LQT関連遺伝子に変異を認めず,説明のつかない失神を認める例において,QTcが480~499ミリ秒を示す場合,先天性LQTの可能性が高い。
緊急対応の判断基準
【1】心肺停止を伴う多形性心室頻拍(torsade de pointes:TdP)(図2図)の発作時:心肺蘇生を行うとともに,QT延長を助長する誘因(徐脈や低カリウム血症など)を是正する必要がある。
【2】TdP発作に対する薬物治療:硫酸マグネシウム静注が有効である。
【3】遺伝子型がわかっている場合:LQT1およびLQT2ではβ遮断薬の静注,LQT3ではメキシレチン静注が第1選択薬となる。ベラパミル静注も特にLQT2には有効とされる。
症候の診かた
【1】基礎心疾患がないにもかかわらず,意識消失発作,心肺蘇生の既往,心室細動を認めた場合,LQTはまず疑うべき疾患である。
【2】特に運動や水泳,電話の音刺激などで症状が出現する場合はLQTを強く疑う。
【3】家族内に若年で突然死した家族やLQTと診断されたものがいれば,心電図変化が明らかでなくても,LQTである場合がある。