診断のポイント
下記【1】【2】があることが必須で,ほかに原因となる疾患がない場合には本態性低血圧となる。
【1】WHOの基準:収縮期血圧100mmHg,拡張期血圧60mmHg未満。
【2】低血圧症状(ふらつきや眼前暗黒感,身体のだるさなど)。
【3】二次性低血圧をきたす疾患として,甲状腺機能低下症,Addison病,下垂体疾患といった内分泌疾患は重要である。
緊急対応の判断基準
皮膚蒼白,頻脈あるいは徐脈,口渇,冷汗,体温低下,呼吸異常,意識障害といったショック状態を伴う低血圧(多くの場合は収縮期血圧90mmHg未満)は,原因検索・除去を優先して,さらに輸血や輸液,強心薬,抗菌薬,ステロイドなどの投与,気道の確保,酸素吸入といった救命処置も必要である。
症候の診かた
【1】低血圧の症状は多彩であるが,一般的な頻度として,立ちくらみ・めまい≫朝起き不良>頭痛・頭重>倦怠感・疲労感>肩こり>動悸>胸痛・胸部圧迫感>失神発作>悪心の順に多い。
【2】不眠,疲れ目,食欲不振,胃もたれ,下痢,便秘,腹痛,脈の乱れ,発汗,冷え,息切れ,乗物酔い,寒暖不耐症,眠気といった不定愁訴と思われるような症状を訴えることもある。
【3】起立性低血圧や食後低血圧など一定条件下で起こる血圧低下もあるので注意が必要である。
検査所見とその読みかた
【1】正しい血圧測定法で収縮期血圧100mmHg未満。
【2】起立性低血圧
❶Schellong試験(坐位から立位へ体位変換)やヘッドアップティルト試験(電動で0~60度に起き上がる受動立位)といった起立負荷試験(20/10~30/15mmHgの血圧低下が陽性)を行う。
❷感度を上げるためにニトログリセリン負荷などを併用することもあるが,偽陽性が生じやすいために十分注意する。
【3】食後低血圧
❶動脈硬化の強い高齢者に多い。
❷食後・食中に血圧を測定して上記血圧低下を証明する。