診断のポイント
【1】症候は非特異的なものが多く(表1図),これらの症状をみた場合,肺血栓塞栓症(PTE)の鑑別を忘れず,疑った場合には検査前臨床的確率を評価する(表2図)。
【2】臨床的確率が高い場合,造影CTにて診断を確定する。
【3】臨床的確率が低・中等度の場合は,Dダイマーを検査し,陰性であれば診断を否定,陽性であれば造影CTなどの画像診断を行う(図1図)。
【4】急性PTEでは,循環動態評価,重症度指数(pulmonary embolism severity index:PESI)評価(表3図)に加え,右室機能障害や心臓バイオマーカーを用いて重症度を分類し,治療法選択(図2図)に結び付ける。
緊急対応の判断基準
循環虚脱あるいは心肺停止の場合には,経皮的心肺補助装置を装着し,より専門的な治療を行える施設への搬送も考慮する。
症候の診かた
特異的症状はないが,危険因子の存在(表4図)とともに症状(表1図)は急性PTEの診断に重要である。急性PTEは,安静解除後の最初の歩行時,排便・排尿時,体位変換時に起こりやすいのも特徴である。
【1】呼吸困難:70~80%と最も高頻度に認められ,ほかに説明できない呼吸困難,突然の呼吸困難として発症する。
【2】胸痛:約半数例で認められる。
【3】失神:重症例にみられるが,重症度とは関連しないとする報告もある。
【4】その他:発熱,咳嗽,血痰,動機,喘鳴,冷感,不安感などもある。
【5】原因となる深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)による下肢の片側性腫脹,疼痛なども認められる。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査
❶Dダイマーは,感度は高いが特異度が低いため除外診断に有用で,臨床的確率が低・中等度の症例でDダイマーが陰性であれば,急性PTEをほぼ否定できる。
❷血液ガス所見では低CO2血症を伴った低O2血症,呼吸性アル
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