診断のポイント
【1】肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)は10~30歳台,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)では50歳台以降が発症年齢の頻度が高い。
【2】心電図・心エコーで肺高血圧症を疑う場合は,右心カテーテル検査での確定診断を考慮するか,肺高血圧症専門施設へ紹介を検討する。
緊急対応の判断基準
【1】右心不全合併の際はすみやかな入院加療が望ましい。
【2】右心不全合併の目安は,下肢浮腫・胸水・頸静脈怒張・消化管浮腫に伴う腹部膨満感や食欲不振。
症候の診かた
【1】心音:肺高血圧症に伴うⅡ音肺動脈成分の亢進が特徴的である。右心負荷に伴うものとして傍胸骨拍動・三尖弁閉鎖不全症に伴う汎収縮期雑音などがある。右心不全を呈すると,右心性Ⅲ音を認める。
【2】頸静脈怒張:半坐位45度で頸静脈拍動を鎖骨上で認める場合は右房圧上昇を示唆する。
【3】浮腫:右心不全合併の際の浮腫は下腿に出現しやすく,圧痕が残るpitting edemaが特徴的である。
【4】その他の身体所見:Eisenmenger症候群・肺静脈閉塞症・肺疾患でみられるばち指などがある。
検査所見とその読みかた
【1】心電図:肺性P波,右軸偏位,右室肥大(V1のR波増高,R/S比>1),右室ストレイン(V1-3で右下がりのST低下)が右室負荷による特徴的所見である。
【2】心エコー:心室中隔圧排・三尖弁逆流・肺動脈弁逆流が特徴的である。
【3】採血:脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値は>100pg/dLもあれば右室負荷としてはかなり有意ととらえてよい。また,膠原病を採血検査でスクリーニングすることが推奨される。
【4】肺換気血流シンチグラム:換気血流ミスマッチの存在がCTEPHに特徴的な所見であ