診断のポイント
まず大動脈解離を想定することが重要である。冬季に多く発生する。近年は高齢者例が多いが,若年者ではMarfan症候群などの血管脆弱性を示す遺伝疾患に留意する必要がある。
【1】胸背部の突然の激痛。
【2】痛みの移動:胸部から腰背部に移動する。
【3】灌流障害による多彩な症状:胸部絞扼痛(心筋梗塞),意識障害・麻痺(脳梗塞),下肢麻痺(脊髄梗塞),腹痛(腸管壊死),尿量減少(腎不全),下肢痛(下肢虚血)。
【4】解離の進展に伴い症状が変化・軽快する。
【5】失神。
緊急対応の判断基準
すべての急性大動脈解離は救急対応を必要とする。
【1】上行大動脈への解離進展:大動脈解離は解離が上行大動脈に及ぶStanford A型解離(A型解離)と,弓部下行大動脈以下にとどまるStanford B型解離(B型解離)に大別される。
❶A型解離
■心膜翻転部内にある上行大動脈に解離が及ぶと心タンポナーデを発症し,2日以内に約半数の症例が死亡する。このため緊急手術を行う。
■自施設で手術できない場合は手術可能な病院に緊急搬送する。搬送中の降圧・鎮静は重要である。特に心囊液貯留を認める症例では死亡の危険性が高く,迅速な対応が必要である。
❷B型解離
■保存的治療の死亡率は約10%であり,切迫破裂,臓器虚血などの合併症がなければ保存的治療が第1選択となる。
■厳重な降圧療法および鎮痛・鎮静が必要であり,急性期はICU,CCU管理が望ましい。
■破裂または臓器虚血を合併する症例には血管内治療や外科治療が必要であり,高次医療機関への緊急搬送を考慮する。
【2】心囊水貯留:CTでの心囊水貯留は心タンポナーデの所見であり,急性期死亡の明らかな徴候となる。直ちに緊急手術を施行しなくてはならない。
【3】臓器虚血症状:大動脈の主要分枝への解離進展,拡大した偽腔による真腔圧排により臓器虚血が発症する。不可逆的な臓器壊死に陥る前に適
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