診断のポイント
【1】腹部大動脈瘤(AAA)は腹部大動脈が正常径の1.5倍以上に拡大したものと定義され,その原因の多くは動脈硬化性である。
【2】多くは無症候性であり,偶発的にCTや超音波検査などで発見されることが多い。
【3】米国では喫煙歴のある65~75歳の男女は超音波スクリーニング検査が推奨されている。
【4】世界的なAAAの手術適応は最大短径55mmであるが,患者の体格が小さいわが国では50mmとする施設が多い。また,5mm/6か月以上の急速拡大をするものも手術適応となる。小さいものは半年に1回程度画像で評価する。
【5】形態では囊状のほうが紡錘状よりも破裂のリスクが高く,50mmに満たない場合でも手術を行うことがある。
緊急対応の判断基準
【1】1)既知のAAAを有する患者や腹部拍動性腫瘤のある患者が,2)腹痛や腰痛,3)低血圧か意識消失発作を認める場合は,破裂を念頭に診断すべきである。この3徴がそろう場合は破裂の可能性がきわめて高い。
【2】破裂を疑った場合は,すみやかにCTを施行すべきである。その場合,急変の可能性があるので医師立ち合いのもと検査をすべきである。
症候の診かた
【1】腹部拍動性腫瘤を触知し,圧痛がある場合は破裂の所見として重要である。
【2】AAAのリスク因子は,年齢,男性,喫煙,高血圧,家族歴などが挙げられる。
【3】動脈硬化性病変であることが多いので,関連する頸動脈・下肢病変を念頭に,頸動脈雑音の有無,上下肢の動脈拍動の有無を確認すべきである。
【4】壁在血栓を有するAAAでは血栓が塞栓源となり,下肢・足の塞栓症状(blue toe syndrome,下肢虚血)で外来受診することもある。
【5】女性は男性と比較し,罹患率は低いものの,破裂リスクは3~4倍高いとされている。そのため男性より5mm小さいサイズを手術適応とする。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査