診療支援
診断

急性動脈閉塞症
Acute Arterial Occlusion
三井 信介
(済生会八幡総合病院・血管外科主任部長)

診断のポイント

【1】急性に発症し,進行する虚血症状。

【2】「5P」症状が特徴。

【3】足関節血圧は50mmHg以下。

【4】心血管疾患の既往。

症候の診かた

【1】塞栓症では突然発症,血栓症では時間経過とともに増悪する。

【2】特徴的な「5P」の症状は以下のとおり。

❶蒼白(paleness):急激な血流低下により,蒼白となるが,時間が経過すればチアノーゼをきたす。

❷疼痛(pain):足趾の突然の痛みを訴える。閉塞範囲の拡大とともに中枢側へ拡大する。

❸脈拍消失(pulselessness):閉塞部位より末梢動脈の脈を触知しない。両側大腿動脈の脈が触知しなければ鞍状塞栓のような大動脈閉塞を疑う。

❹知覚鈍麻(paresthesia):経過時間とともに悪化するが,多くは血流再開とともに回復する。

❺運動麻痺(paralysis):血行再建しても後遺症が残ることがある。

【3】筋肉の硬直がみられれば,血流再開後再灌流障害がほぼ必発する。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査:血算,生化学,凝固系,血液ガス検査は虚血の重症度や虚血再灌流障害の予測を可能とするが,本疾患に典型的なものはない。CPK異常高値,高カリウム血症は筋腎代謝症候群(myonephropathic metabolic syndrome:MNMS)の合併を示唆する。

【2】ドプラ血流計:足背,後脛骨動脈の血流音を確認する。血流音が聴取不能な症例は早急な血行再建が必要となる。

【3】原因特定のための検査:心電図,胸部X線,心エコーで心房細動,弁膜疾患,動脈瘤の有無を確認する。

確定診断の決め手

【1】発症状況と特徴的な「5P」症状,およびドプラ血流計による血流評価で診断は容易である。

【2】さらに画像診断で診断を確定する。時間的余裕があり,腎機能が許せば造影CTがよい。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】Blue-toe症候群

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