診療支援
診断

深部静脈血栓症
Deep Vein Thrombosis (DVT)
佐戸川 弘之
(福島県立医科大学准教授・心臓血管外科)

診断のポイント

【1】まず,患者の背景および症状からWellsスコアを評価し深部静脈血栓症(DVT)リスクの推定を行う(表1)。

【2】低・中リスクではDダイマー検査で除外診断を行い,陽性なら画像診断を施行する(図1)。

【3】高リスクでは,初めから静脈エコーを施行する。

【4】さらに必要な場合,造影CTやMRIを施行する。

緊急対応の判断基準

【1】腫脹,疼痛が高度で色調変化を伴った有痛性白股腫,有痛性青股腫において,迅速なカテーテル的治療や,外科的血栓摘除術が必要と判断したなら,対応可能な施設へ搬送すべきである(図2)。

【2】DVTの高リスク例で,心拍数が100/分以上,呼吸困難,胸痛,頻呼吸など,呼吸器症状があれば肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)の合併を疑い,バイタル維持と迅速な処置を進める。

症候の診かた

【1】急性期症状:腫脹,疼痛,色調変化(暗赤色)が典型的であるが,無症状例も多い。下肢腫脹が下腿部では大腿部血栓を,大腿部まで及ぶ場合はより中枢側のDVTを疑う。Homans徴候,Lowenbergテストは陰性の場合が多い。

【2】慢性期に静脈瘤,色素沈着などのうっ滞性皮膚症状を繰り返す例は血栓後症候群(postthrombotic syndrome:PTS)とよばれ,DVT再発時には急性期症状が加わってくる。

検査所見とその読みかた

【1】DVTを症状所見から診断することは難しい。

【2】線溶系マーカーとしてDダイマーが診断に用いられるが,高齢者,癌患者では高値のことが多くスクリーニングには適さない。Dダイマーが正常の場合,急性DVTを否定できる。

【3】画像検査

❶第1選択は静脈エコーである。プローブで圧迫し,虚脱しない部分があれば血栓ありと診断する(静脈圧迫法)(図34)。急性期血栓は低輝度であるが,経過により輝度の増加,退縮傾向を

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