診断のポイント
【1】50歳台以降のやせ型非喫煙女性。
【2】慢性の咳嗽と喀痰。
【3】しばしば血痰。
【4】ほぼ無症状で胸部画像の異常陰影のみのことも。
【5】胸部画像の陰影は自然経過で増悪と寛解を繰り返すことも。
症候の診かた
【1】咳嗽と喀痰:ほとんどの患者が,慢性に経過する咳嗽と膿性喀痰を訴える。月単位あるいは年単位で緩徐に増悪する例は多いが,長期間安定している例や無治療で軽快する例もある。
【2】血痰と喀血:病勢とは無関係に,経過中しばしば血痰を訴える。止血剤で対応できる軽微な例が多く,気管支動脈塞栓術を要するような喀血はまれである。
【3】息切れと呼吸困難:終末期に近い状態では起こりうるが,病初期から息切れや呼吸困難を訴えることはない。
【4】胸痛:胸膜炎(胸水)を呈することはまれであり,胸痛を訴える例も少ない。
【5】発熱や全身倦怠感や体重減少:病状が進行すると,炎症の程度を反映して非特異的な全身症状を呈するようになる。特に体重減少は予後不良因子として重要である。
検査所見とその読みかた
【1】胸部画像検査(胸部X線写真や胸部CT):中葉と舌区を中心に,小結節性陰影の散布や気管支拡張所見を呈する。胸部X線写真正面像では,中下肺野縦隔側寄りに,不規則に分布する小結節性陰影や線状の陰影を認める。
【2】喀痰抗酸菌検査:非結核性抗酸菌は環境常在菌であることから,2回以上の異なる喀痰検体での培養陽性を確認する。核酸増幅法陽性は培養陽性の代わりにはならない点に留意する。なお,結核とは異なり,胃液検体は本症の診断的有用性に乏しい。
【3】マイコバクテリウム抗体キット(キャピリア®MAC抗体ELISA):保険収載されている血清診断法である。菌の証明を重要視する感染症診断の原則から,補助診断法であることに留意する。診断の参考として用いた場合,特異度は90%を超えるものの,感度は60%程度と高くはない。また