先天性・後天性因子の組み合わせの結果,本症が成立するため,発生頻度に関する正確なデータがない。
診断のポイント
【1】多量の膿性喀痰,慢性咳嗽,血痰や喀血,繰り返す気道感染から本症を疑う。
【2】病態が進行すると労作時さらに安静時の息切れ,呼吸困難が出現する。
【3】気道感染は多量の喀血の誘因となる。
【4】後述する胸部X線写真や胸部CTで気管支拡張所見を認めることがポイントである。
緊急対応の判断基準
【1】気道感染から呼吸不全に陥った症例,大量喀血をきたす症例は専門施設への緊急搬送が必要である。
【2】感染に対する適切な抗菌薬の経静脈的投与,酸素療法をはじめとする呼吸管理,喀血に対する出血部位確認のための気管支鏡検査,止血のための気管支動脈造影と気管支動脈塞栓術(embolization)などが必要となる。
症候の診かた
【1】自覚症状としては,慢性の膿性喀痰,咳嗽,血痰,喀血が主訴となる。気道感染から増悪をきたした場合には息切れ,呼吸困難の悪化がこれに加わる。
【2】呼吸数,血圧,脈拍,口唇や手指のチアノーゼに注意し,パルスオキシメータで酸素飽和度を直ちに測定する。
【3】聴診にて中・下肺野にcoarse cracklesを聴取することが多い。
【4】慢性副鼻腔炎の有無や全身性炎症性疾患,例えば関節リウマチや潰瘍性大腸炎においては本症が併発するので,呼吸器系の症候にとどまらず,全身の症候に目を向ける。関節の変形,ばち指などに注意する。
検査所見とその読みかた
【1】胸部X線:気管支壁の肥厚を示すbronchial tram line shadowから,進行例では気管支が囊胞状に拡張した所見を認める。両側に多数の径1~2cmの囊胞や,囊胞内の分泌物による液面形成など所見は多岐にわたる。
【2】胸部CT:気管支径/肺動脈外径が,本症では1.0を超え,気管支径≧肺動脈外径となる。形態的には,1)円筒状(