診療支援
診断

じん肺症
Pneumoconiosis
岸本 卓巳
((独)労働者健康安全機構アスベスト疾患研究・研修センター・所長)

[Ⅰ]珪肺

診断のポイント

【1】数年以上の粉じん作業歴がある。大量曝露であれば数か月~数年で進展することもある。

【2】粉じん作業:採石場,窯業,鋳物業,土木(トンネル)工事,研磨剤製造(金属,石炭),鉱山など(表1)。

【3】胸部X線・CT:両側上肺野を中心とする粒状影の散布。進行すれば塊状影が加わる。

症候の診かた

【1】主症状:無症状のものから呼吸困難が強度のものまである。労作時呼吸困難,咳,痰が主症状である。

【2】塊状影の形成:粉じん作業場から離れても小結節陰影が増加したり,融合して塊状影すなわちprogressive massive fibrosis(PMF)を形成する。塊状影が進行すると気腫性変化も加わり,著しい呼吸機能障害をきたす。

【3】ラ音の聴取:肺の気腫性変化が強くなれば,乾性ラ音が聴取されることもある。気管支炎の合併があると,湿性ラ音が聴取されることがある。

【4】気腫化あるいは線維化の要因:喫煙による影響が少なくない。

検査所見とその読みかた

【1】胸部X線:両側上肺野を中心とする辺縁明瞭な粒状影を認める。粒状影は融合し塊状影となるため,両側上葉の縮小化とともに肺門が挙上する(図1)。

【2】胸部CT:境界明瞭なCT値の高い小結節が上肺野を中心にびまん性に分布し,融合して大きな腫瘤影を形成する。縦隔や肺門リンパ節に卵殻状石灰化(egg shells)を認めることがある(図1)。

【3】肺機能検査:2次的に肺気腫を合併することによって,閉塞性換気障害を呈することが多い。気腫化とともに線維化が加わることにより肺活量の低下とともに低酸素血症をきたす。

確定診断の決め手

 職業歴を詳細に聴取し,画像所見と併せて診断する。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】転移性肺癌:粒状影の分布が上肺野に優位である点が転移性肺癌として矛盾する。

【2】原発性肺癌:大陰影が鑑別の対象になるが,M

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