診断のポイント
【1】妊娠可能な若年女性に好発。
【2】高分解能CT(HRCT)で多発性肺囊胞。
【3】肺外病変(腎血管筋脂肪腫,後腹膜腔のリンパ脈管筋腫など)。
【4】リンパ系機能異常による症候(乳び胸水や腹水,下肢のリンパ浮腫など)。
【5】結節性硬化症に合併することがある。
緊急対応の判断基準
【1】気胸:自然気胸を高頻度に合併し,再発しやすい。突然の胸痛や呼吸困難を生じた場合に疑う。両側同時気胸を発症することがある。3日以上肺が虚脱した状況では,ドレーン挿入に伴い再膨張性肺水腫を合併するリスクを念頭におく。
【2】動脈瘤破裂:腎血管筋脂肪腫内の動脈瘤の破裂により,突然の激しい背部痛・腹痛,血尿などを呈することがある。出血性ショックに至る場合もある。緊急での腎動脈塞栓術を行う。
症候の診かた
【1】労作時呼吸困難,自然気胸,血痰:若年の女性で認めた場合には疑う。
【2】無症状で偶然の機会(健診での胸部異常陰影や腹部腫瘤の指摘,他疾患の精査中の胸部CTなど)を契機に診断される例もある。
【3】下肢のリンパ浮腫:左側(特に左大腿部)に出現しやすい。
【4】皮膚所見:結節性硬化症では特徴的な皮膚所見(白斑,顔面の血管線維腫,シャグリンパッチ,爪囲線維腫など)を認める。
検査所見とその読みかた
【1】胸部X線写真:軽症例では異常を指摘できない。間質性肺炎を示唆する網状粒状影・すりガラス影を認めるにもかかわらず,肺容積減少を認めない。
【2】胸部HRCT:肺気腫の低吸収領域とは異なり,薄壁を有する類円形の囊胞(両肺,びまん性,上~下肺野内に比較的均等に分布)と認識される。
【3】肺機能検査:閉塞性換気障害(FEV1.0の低下)と拡散障害。換気機能が正常でも拡散能低下を認めることが多い。
【4】腹部~骨盤部CTやMRI:肺外病変では腎血管筋脂肪腫を40%前後の症例で認める。結節性硬化症では両側腎に多発することが多い