診療支援
診断

原発性肺腫瘍
Primary Lung Tumor
髙橋 和久
(順天堂大学大学院教授・呼吸器内科学)

 肺に発生する腫瘍の95%が悪性腫瘍で,そのなかで気道上皮細胞から発生する悪性腫瘍を原発性肺癌とよぶ。肺癌は組織学的に非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC。腺癌,扁平上皮癌,大細胞癌から成り全体の85%を占める)と気道の神経内分泌細胞由来の小細胞肺癌(small cell lung cancer:SCLC。全体の15%を占める)に分類される。

診断のポイント

 男女ともに頻度的には腺癌が全体の50%と最多である。扁平上皮癌とSCLCは喫煙者に好発する。肺癌は70歳以上が65%と高齢者に多い。

【1】肺癌は咳,痰,胸痛,息切れなどの自覚症状を伴う場合と,健診で胸部異常陰影を指摘され来院する場合とがある。

【2】腺癌は胸部X線上,末梢肺に発生することが多い。また,CT上,胸膜陥入,スピキュラ,血管の巻き込みを認める以外に淡いすりガラス影として発見されることも多い。一方,SCLCや肺扁平上皮癌は肺門縦隔臓器に接して存在することが多い。

【3】扁平上皮癌とSCLCでは喀痰細胞診が陽性になることも多い。一方,末梢に好発する腺癌と大細胞癌では喀痰細胞診の陽性率は低い。確定診断は後述する気管支鏡,CT(超音波)ガイド下生検などの病理学的検査で行う。

【4】TNM分類に基づく臨床病期の決定が治療法を選定するうえで重要である([治療法ワンポイント・メモ]参照)。

緊急対応の判断基準

 肺癌は癌救急(oncologic emergency)をきたしやすい癌種である。なかでも以下の病態は緊急度が高い。

【1】喀血

❶中枢気道に発生する腫瘍に多い。扁平上皮癌に多くみられる。

❷時に緊急で気管支動脈塞栓術を施行する場合がある。

【2】上大静脈症候群

❶顔面と両上肢の浮腫を伴う。

❷緊急で放射線照射を施行することがある。

【3】高カルシウム血症

❶意識障害をきたすことがある。

❷補正カルシウム

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