診断のポイント
【1】無症状で,健診などでの胸部画像で偶然,単発もしくは多発結節影で発見されることが多い。
【2】右→左シャントが大きい症例は低酸素血症やチアノーゼをきたす。
【3】脳膿瘍・脳梗塞など,全身の動脈系に血栓症・感染症を起こすことがある〔奇異性塞栓症(paradoxical embolism)〕。
【4】肺動静脈瘻が破裂して血胸・喀血を起こすことがある。特に妊娠中にみられる。
【5】家族歴がある場合,鼻出血の多い場合,脳・肝臓など他の臓器に動静脈奇形がある場合に肺動静脈瘻を合併していることがある〔遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia:HHT,Osler病)〕。
症候の診かた
【1】胸部異常陰影:偶発的に結節性もしくは腫瘤性陰影として発見されることが多い。
【2】低酸素血症・労作時呼吸困難・チアノーゼ:静脈血が肺内毛細血管を通過せず肺動静脈瘻内を通過するとその静脈血は酸素化されないために起こる。右→左シャント率がある程度大きくなると発症する。
【3】脳膿瘍・脳梗塞(奇異性塞栓症):静脈血内に入り込んだ細菌や静脈内で生成された血栓が肺毛細血管でフィルタリングされず,肺動静脈瘻を通って体循環系へ直接流れ込んでしまうために起こる。特に脳膿瘍は右→左シャント率が正常に近くても発症することがある。
【4】喀血・血胸:肺動静脈瘻の破裂により発症する。妊娠中に好発する。時に致死的になることがある。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査
❶胸部単純X線写真(図1図):典型例は,辺縁平滑で時に分葉化を伴う円形~楕円形の結節・腫瘤影である。時にこれに流入もしくは流出する血管を示す帯状の陰影を認めることもある。
❷胸部単純CT(図2図上段):濃度均一で境界明瞭な時に分葉化を伴う結節・腫瘤影を認め,それに連続する血管影を認める。
【2】胸部