気胸とは,胸膜の破綻により胸膜腔(臓側胸膜と壁側胸膜の間のスペース)に空気が貯留し,肺が虚脱した状態である。胸膜下の気腫性肺囊胞(ブラ・ブレブ)の破綻が原因となる自然気胸が気胸の大部分を占める。自然気胸には,肺疾患を有さない者に生じる原発性自然気胸と,先行する肺疾患を有する者に生じる続発性自然気胸がある。
診断のポイント
【1】突然の胸痛,呼吸困難が初発症状となることが多いが,症状に乏しい場合もある。
【2】肺虚脱が高度であれば,胸部聴打診において,患側の呼吸音の減弱と鼓音を認める。
【3】胸部単純X線写真や胸部CTで,肺虚脱を認める。時に,患側胸腔内に液体貯留(胸水,血気胸)を認める。
【4】原発性自然気胸は,いわゆる気胸体型(長身,痩身で細長・扁平型胸郭)の10~20歳台の若年男性に多い。発症リスクとして,喫煙,気胸の既往歴,家族歴が知られている。
【5】続発性自然気胸の基礎疾患は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)が最も多い。
緊急対応の判断基準
以下の3病態では,対応の遅れが死亡につながる恐れがある。緊急胸腔ドレナージや外科手術を要する可能性があるため,呼吸器外科医との密な連携が必要となる。入院管理は呼吸器外科医のいる施設が推奨される。
【1】緊張性気胸(図1図):破綻した気腫性肺囊胞がチェックバルブとなり,患側の胸腔内圧が著しく上昇して陽圧となった状態。患側肺の著明な虚脱が生じるとともに,心臓や健側肺が圧排され,低酸素血症と静脈還流障害による心拍出量の低下をきたし,進行性の呼吸循環不全に至る。
【2】両側同時気胸:同時性に左右両側に気胸を有する状態。片側ドレナージ中に対側にも気胸を発症したものを含む。前者では両肺が同時に虚脱するため,重篤な呼吸不全をきたす。
【3】血気胸:気胸により臓側胸膜と壁側胸膜の癒着が剝がれ
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