[Ⅰ]急性腎盂腎炎
診断のポイント
【1】尿検査にて膿尿,細菌尿を認める。また尿培養検査は原因菌の証明と薬剤感受性を調べるため必須である。
【2】悪心や発熱など全身症状と膀胱刺激症状や肋骨・脊柱角部圧痛(CVA tenderness),叩打痛など局所症状を認める。
【3】基礎疾患の有無により,基礎疾患を有しない「単純性」と基礎疾患を有する「複雑性」に分類される。
【4】尿路閉塞による水腎症,気腫性腎盂腎炎,膿腎症など泌尿器科的ドレナージが必要となる病態の鑑別に画像検査が有効である。
【5】敗血症に移行する危険性が高い。
緊急対応の判断基準
腎盂腎炎は敗血症に進展する危険性が高く,的確な重症度判定と治療選択が重要である。
【1】外来治療か入院治療かの判定を以下により行う。
❶ショックを呈していない。
❷全身性炎症性反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)の診断基準を満たしていない。
❸悪心や嘔吐がない。
❹脱水症の徴候を認めない。
❺糖尿病など免疫機能を低下させる疾患が存在しない。
❻重篤な感染症の徴候を認めない。
【2】qSOFA(quick sequential organ failure assessment)(表1図)を用い,2項目以上満たす場合は,敗血症を疑い,集中治療管理を考慮するとともに,臓器障害の評価を行う。
症候の診かた
【1】発熱:急性単純性腎盂腎炎は急性単純性膀胱炎が重症化した尿路感染症である。腎盂腎炎では発熱を認めることが多く,両者の鑑別に重要である。
【2】悪心:悪心や嘔吐などの消化器症状など腹膜刺激に伴う症状が出現することがあり,急性腹症の除外診断に重要である。
【3】CVA tenderness,叩打痛:腎臓周囲への炎症の浸潤や結石など尿路閉塞による腎臓の腫大によりCVA tendernessや叩打痛を認める。
【4】膀胱刺