診断のポイント
【1】腰痛,貧血,腎機能障害,高カルシウム血症の存在。
【2】総蛋白の増減とA/G比の異常。
【3】血清,尿のM蛋白の検出。
【4】骨髄中の単クローン性形質細胞の増生。
【5】溶骨性病変の存在。
緊急対応の判断基準
【1】高カルシウム血症。
【2】神経症状を伴う骨病変。
【3】病的骨折。
【4】腎機能障害(クレアチニン高値)。
【5】過粘稠度症候群。
症候の診かた
【1】骨髄腫の症候は,Calcium elevation(高カルシウム血症),Renal dysfunction(腎障害),Anemia(貧血),Bone disease(骨病変)の頭文字をとってCRAB症状という。
【2】多発性骨髄腫
❶貧血による息切れや倦怠感,白血球減少に伴う発熱や感染症,血小板減少による紫斑や出血傾向など:骨髄中で増殖した骨髄腫細胞により,正常造血が妨げられて生じる。
❷肺炎や尿路感染,敗血症:正常形質細胞の減少から正常免疫グロブリン産生低下をきたして引き起こされる。
❸腎機能障害や過粘稠度症候群:M蛋白の増加により生じる。
❹骨痛や病的骨折,脊髄圧迫による神経障害,高カルシウム血症:骨髄腫細胞に刺激された破骨細胞が骨融解を促進し引き起こされる。
検査所見とその読みかた
診断と治療方針決定のため,血液検査,尿検査,骨髄検査や全身骨X線検査,単純CT,PET-CT,MRIなどの画像検査が行われる(表1図)。これらの検査によって,骨髄腫細胞の証明だけでなく,病型診断,病期診断,臓器障害の有無を確認する。
【1】血液検査
❶血算:造血障害の程度を調べる。特に貧血〔Hb(ヘモグロビン)基準値より2g/dL以上低下またはHb 10g/dL未満〕は臓器障害ありとみなされる。
❷蛋白分画:M-spike,免疫電気泳動でM-bow,免疫固定法でMバンドが検出される。
❸また,free light chain(FLC)検査のκ値,λ値,