診療支援
診断

■内分泌疾患の最近の動向
有馬 寛
(名古屋大学大学院教授・糖尿病・内分泌内科学)


 内分泌疾患は,視床下部,下垂体,甲状腺,副甲状腺,副腎,性腺などの内分泌腺から分泌されるホルモンの過剰あるいは作用不足によって生じる。また,これらの内分泌腺に生じる腫瘍においてはホルモンの過剰分泌の有無とともに悪性度も問題になる。さらには内分泌腺以外の腫瘍でホルモンが産生される場合もある。患者の症状や血液検査からホルモンの過不足が疑われる場合には,まずはそのホルモン値を測定し,その値に異常を認めれば,MRIやCT,エコーといった画像検査で該当する臓器における器質的な異常の有無を確認する。また,基礎状態におけるホルモンが低値ならホルモン分泌を刺激する負荷試験を,ホルモンが高値ならホルモン分泌を抑制する負荷試験を行う。さらに,遺伝子変異による疾患を疑う場合には家族歴を聴取するとともに,遺伝子検査の施行を検討する。

 上記の診断のプロセスは当然ながら内分泌疾患を疑うところから始まる。しかしながら,患者の症状や通常の血液検査から内分泌疾患を疑うためには,各種ホルモンの作用を正しく理解するのみならず,内分泌疾患を想定しながら診療にあたる姿勢を普段から身に着けておくことが必要となる。また,ホルモンの過不足は常に相対的に判断する必要がある。例えばあるホルモン値が正常範囲にあってもその標的となるホルモンが低値を示すなら,前者のホルモンの不足が生じている可能性を考えるべきである。

 近年,日本内分泌学会およびその分科会からいくつかの診療ガイドラインが刊行されたので,内分泌疾患の診断に際しては本書と合わせて参照されたい。最新のガイドラインに従って診療することが大切であることは言を俟たない。ただ,どのようなガイドラインであっても,すべての疾患を,あるいは病態のすべてを網羅できるものではない。例えば,主症候から診断に至る内分泌疾患のガイドラインにおいては,ホルモン分泌異常の程度が軽く無症候の病態は診

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